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★無料記事【島崎英純】2011Jリーグ第7節・名古屋戦プレビュー(2011/4/22)

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東日本大震災の発生による影響で中断されていたJリーグがついに今週末に再開される。

浦和レッズは4月24日に昨季のJリーグ王者、名古屋グランパスと対戦する。

それでは、今メルマガでも久しぶりとなる試合前プレビューを行いたいと思う。まずは浦和の現況から。

最初に負傷者状況を整理しておこう。現在別メニュー調整を強いられているのは平川忠亮と田中達也のふたりだ。このうち田中は緩やかながらも回復傾向にあるようで、日曜日の開幕戦に間に合う可能性がある。一方、平川はしばらく全体練習に合流しておらず、直前の練習試合にも不出場だったため、おそらく名古屋戦は欠場することになるだろう。また、梅崎司が最近までインフルエンザに罹っていたためコンディションが整っておらずにベンチからも外れる見込み。そしてキャプテンの鈴木啓太は開幕戦のヴィッセル神戸戦で退場処分となったため、今回の名古屋戦は出場停止となっている。

ホーム開幕戦となる今回、浦和は厳しい相手と対峙することになった。その戦いに臨むメンバーのスタメン予想は以下の通りだ。

Jリーグ第7節・名古屋戦スタメン予想

名古屋戦予想スタメン

今回は予想フォーメーションを4-1-2-3にしてみた。これは直近のトレーニングマッチで控え組が流通経済大と対戦した時に、チームがこのシステムを採用していたからだ。残念ながら主力組で戦ったサンフレッチェ広島とのトレーニングマッチは非公開だったために確証はないが、ボランチ・柏木陽介の特性、トップ下のマルシオ・リシャルデスのこれまでの孤立感などを加味すると、この布陣の方がチームバランスを保てる気がする。唯一、鈴木の代わりに中盤の底に入る山田暢久のアンカー特性が未知数だが、彼のサッカー脳はそれなりに高いので、ソツなくこなすかもしれない。また35歳の彼がスタミナを切らした場合は、今季徳島ヴォルティスから移籍加入した青山隼が後半途中からその任を全うしてくれるだろう。

長期の中断期間中に、浦和は6試合のトレーニングマッチ(うち3試合が主力組、3試合が控え組で臨んだ)を行い、日々の練習では仮想・名古屋をイメージしたメニューが組まれていた。ある戦術練習ではゼリコ・ペトロヴィッチ監督自らピッチ内に入り、選手にパスを供給しながら、「こうやって最後尾の闘莉王がロングフィードを入れてきたら、どう動く?」などとサゼスチョンするシーンもあった。

監督、選手の意気込みはチーム全体へと伝播し、再開初戦の大一番に向けて士気が高まっているのは間違いない。名古屋戦に出場できない鈴木でさえ、こんなふうに話すほどだ。

「まずは目前の試合に注力しなきゃね。次の仙台戦は、あっちのホームで試合をするという意味で意義のあるゲームになるだろうけど、その前の名古屋戦は僕らにとっては重要な試合。ホーム開幕戦で勝てるか、勝てないかは大事なことだし、そもそもウチはリーグ開幕戦で負けているから、連敗は許されない」

ペトロヴィッチ監督は指揮官就任以降、チームに厳格な戦術を植え付けてきた。アタッキングサードでの勝負、各ポジションの役割徹底、パス・判断スピードの向上などなど。なかでもペトロヴィッチ監督がもっとも注力したのは守備組織の構築だったように思う。そんな中、高い位置からのプレスなどは、そのアグレッシブ性から攻撃的な守備と言えるが、一方で指揮官は後方での数的優位性の確保などを徹底させており、その点では守備意識の傾倒ぶりは際立っている。

それを踏まえた上で、今回の浦和の布陣での懸念材料はサイドバックの人材にある。今回スタメンで出場するであろう宇賀神友弥と高橋峻希は双方共に攻撃特性が高い反面、守備で不安がある。練習ではこのふたりが度々バックラインでのポジショニング不備を指摘され、ベンチから修正の指示が飛んでいた。ペトロヴィッチ監督はサイドバックのオーバーラップを規制する傾向にあるが、それでも機を見た際には彼らも攻撃に関与する必要があるだろう。だが、その一瞬の判断で生まれたギャップを相手に突かれた際は厳しい局面を迎える危険性も孕む。

また、ここまでの浦和を見ていると、守備ブロックに注力し過ぎるあまりに、ボールポゼッションでは劣勢に立たされる可能性が高いと見る。特にサイドバックが中盤でのボール回しに参加しないことはビルドアップに難を抱える大きな要因になる。そして、この現象はこれまでの今メルマガの原稿でも記述してきた。

ただし、浦和はこの不備をあえて黙認した上で、素早く敵陣にミドル、ロングフィードを供給してボールを敵陣に留めさせ、そこでプレーをし続ける形を目指している。後方からのミドル、ロングフィードはボールを相手とイーブンの状態にすることを意味し、自ら主導権を握ることはできなくなる。しかし、そもそも今季の浦和は自らがボールを保持して攻略する攻撃パターンをそれほど狙っていない。むしろ相手にボールを持たせた上でハイプレスなどの守備を仕掛け、そこからゴールを射抜く姿勢を露わにしており、その点ではそれほどボールポゼッションに固執する必要はないと、現場が判断しているのかもしれない。

そうなると逆に、浦和は自らがボールを持たされると難しい展開を強いられるだろう。4月10日のモンテディオ山形とのトレーニングマッチでは自陣でセンターバックのマシュー・スピラノビッチと永田充のセンターバックコンビがボールキープしてビルドアップを行おうとしたが、周囲の味方のサポート・フォローが希薄でパス回しができず、自陣ゴール前で相手のプレスに遭って失点の危機を迎えるシーンがあった。この際、ペトロヴィッチ監督はベンチから必死に「前にボールを蹴り込め!」と怒鳴っていたが、相手のハイプレッシャーを受けた浦和のCB陣にその余裕はなく、彼らはパニック状態に陥っていた。

実は名古屋は、浦和と似たようなスタイルを持つチームだと分析する。名古屋は浦和以上に人材豊富で選手個人の力量も高いが、そのプレースタイルは究極のリアクションサッカーである。

CBの田中マルクス闘莉王と増川隆洋は屈強でヘディングが強いし、GKの楢崎正剛のゴールキーピングは未だに日本人屈指だ。またサイドバックの田中隼磨と阿部翔平は運動量豊富で頻繁に上下動するが、それでも両翼が同時に上がることはなく、片方はしっかりと守備ブロックを形成する。また、現在の名古屋は中盤の核であるアンカーのダニルソンが負傷離脱しており、中盤の底を2枚にする4-2-2-2で臨んでいる。そのボランチは中村直志と小川佳純が務めることになりそうだが、このシステム変更によって、名古屋は自陣バイタルエリアのケアはできつつあるものの、前線の選手と中盤以下の選手との距離が空いてチームのコンパクトネスを保てず、ボールポゼッションに苦慮しているようにも見える。

一方で、名古屋のアタッカー陣は強力だ。これまでは負傷やコンディション不良で低調が伝えられていたジョシュア・ケネディが復調気配にあるというニュースもある。そのケネディと2トップを組むのが、彼とは特性の異なる永井謙祐だ。ケネディは空中戦に強く、ピンポイントでゴールを狙えるハイタワー&フィニッシャー。そして永井は抜群のスピードで相手を出し抜くハイパードリブラー。このふたりの力量があれば、少々精度が低く意図の感じられない後方からのパスであっても、すぐさまゴールに直結出来るだけの型が、名古屋にはある。

また、中盤の両翼には金崎夢生と藤本淳吾というスーパーテクニシャンが居並ぶ。ふたりは主にサイドエリアで勝負するタイプのアタッカーだが、金崎にはドリブル、藤本には精度の高い左足キックと、それぞれに異なるストロングポイントを持つ。また、敵陣でファウルを受けた際は藤本の高精度FKが火を噴く。

名古屋のアタッカー陣は今季の浦和と同様に、各ポジションの連動性には課題があるものの、ひとりで全てのプレーを完結できる能力は突出している。そして、このような個性を活かすためには、潔く守備ブロックを固めて堅牢性を維持し、相手のミスに付け込んで少ないチャンスをモノにする戦い方の方が理に適い、勝利への道が近づくことを、名古屋は経験則で理解している。

今季の浦和は、このような名古屋と同様のスタイル、手法で勝利を目指すことになるだろう。果たしてその思惑をピッチ上で実践し、結果に結びつけることができるのはどちらなのか。

現象面での判断。

ホーム・埼玉スタジアムだからといって、浦和がゲームの主導権を握り、名古屋を自陣に押し込んで試合を進めるのは、決して良い形じゃない。それはむしろ名古屋の思うつぼだ。今の浦和に限っていえば、自らがボールを保持するのは本意ではなく、相手に嫌々やらされていると考えた方がいい。

ピッチの上下左右をボールが行き交う激しい展開の中で、千載一遇のチャンスを活かせたチームが勝利する。ずばり、浦和のキープレーヤーはマルシオ・リシャルデス。彼が生きれば、浦和の今後に明るい未来が開けるだろう。

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