【無料公開】【ゆめすく】ブラウブリッツ秋田 畑潤基選手が秋田市立飯島南小学校で特別授業「どんどんチャレンジしてどんどん失敗する。そうしたらぜったい成功できる」
もう1個大事なことは、自分を信じること。
最後に決めるのは自分で、なにをするにしても、なにをやるにしても、最後に決めるのは自分。その決断に責任を持たなきゃいけないのも自分です。誰かのせいにするのもいけないし。
自分はプロになる、サッカー選手になるって小学1年生の頃に決めて、そこから親にさんざん迷惑もかけたし、いっぱい苦労をかけて、いまの自分がいます。自分はそれで親に恩返しをするっていう気持ちでずっとサッカーを続けてプロになって。
「サッカー選手はやめた方がいい」とか「君の才能だったら無理だよ」とか、そういうのもいっぱい言われて、だけど自分は親のために、これだけ親に迷惑かけてきたから、逆にそうやって言われたことがパワーにもなって。「だったら見返してやるよ」って。「あんたたちが言ってたことが間違ってたって証明してやるよ」って。自分でちゃんと決めて、ここまでサッカー選手としてプレーができていて。そういう面では自分の決断が間違ってなかったなと思うし、ほかの人の意見を受け入れなくてよかったなと思います。
ただその中でもいい意見を言ってくれる人はいます。いろんな意見があって、うまくいい意見だけを取り入れるっていうのはたぶん難しいと思うし。いまの俺でもたぶんできないし、どれがいい意見なんてわからない。やってみないとわからない。
でも、自分の夢を否定してくる人は違う。応援してくれる人が言う意見とかアドバイスとかだけは、取り入れたほうがいいと自分は思う。まず否定してくる人は、とりあえず自分自身のことをちゃんと思ってくれてないから。
まず自分がプロサッカー選手になるって決めて、その意見を尊重してくれて「こうしたほうがいいんじゃないの? 」「だったらもっと練習量増やしたほうがいいんじゃないの?」と言ってくれる人が本当の人だと思います。それを受け入れて、最後に自分自身がどう思うか。それを聞いた上で、自分自身がプロの世界は無理だと思うなら、諦めるのもひとつの手段だと思う。それでもぜったい夢を叶えるって思うんだったら、その夢に向かって走り続けたほうがいいと思う。自分の夢に対する思いというか、そういうものが大事になってくると思うから。
まだそこまで深い話はされないと思うけど、今後は親とかともそういう話とかも出てくるだろうし、意見を聞き入れて、でも最後に決めるのは自分だから。自分の言葉とか判断を信用してほしいというか、信じてほしいなって思います。わかるかな? 難しいよね。
いままで他人に言われたりして、自分がこうだと思ってたことと、違うことをしちゃった経験がある子はいるかな? さすがにまだいない? ある? どういう?
でも、その意見を聞かないほうがいいなと思った? たぶん結果論になっちゃうけど、その人がどういう思いで言ったのかを感じられればまた違うと思う。さっき言ったみたいに、本当に自分のことを思って言ってくれてるのか、そうじゃないのかを見極めるのって難しいけど、見極めていってほしいなって思います。
ちょっと一方的に話しちゃったけど、出会いを大切にっていうことと、失敗を恐れない、自分を信じること。自分はこれを大事にしてやってきて、ここまで成長できてプロとしてやって来られているんで。
全部みんながちゃんと素直に取り入れる必要はないと思うし。ここだけが大事だなと思ったらここだけでいいし。自分がいいなって思った部分だけ感じてくれればいいかなって自分は思うんで。思いとかは人それぞれだし。
最後に質問とかあれば。なんでもいいです。きょうのことじゃなくてもなんでもいいよ。
生徒:今季、何ゴールですか?
畑:ゼロです。
生徒:朝食は何ですか?
畑:朝食は納豆ご飯と味噌汁とハタハタです。
生徒:パンとご飯どっち派ですか?
畑:パンが好きだけど、普段はご飯食べてオフの日はパン食べます。
生徒:いままで戦ったところで一番強かったところはどこですか?
畑:どこだろうな。自分がブラウブリッツ秋田の選手として戦って一番強かったなって思ったのはジェフユナイテッド千葉。
生徒:なにがきっかけでブラウブリッツに入ったんですか?
畑:吉田監督が、自分がプロ1年目の頃に長崎のチームに入って、そこから沼津のチームに移籍して、そこにいたのがいまの秋田の監督の吉田監督で。そこで1年半プレーさせてもらって、そこから5年ぐらい自分は長崎とかでプレーしていて。また29歳になる年かな…に、吉田監督から「来てほしい」って声がかかって、秋田に来ることになりました。
生徒:憧れの選手は誰ですか?
畑:わかるかな。
生徒:誰でも言ってください。
畑:スアレス。
生徒:知ってます。
畑:スアレス選手です。海外の選手なんだけど、バルセロナとかにいた選手です。
生徒:いままでサッカーしてきて有名なサッカー選手って誰に会いましたか?
畑:自分が長崎で初めてプロになって、途中交代で試合に出るってなったとき、対戦相手の札幌にいた小野伸二選手と途中交代のタイミングがちょうど一緒で。たぶん初めて小野伸二選手を見た。日本代表ですごいプレーしてた選手。
生徒:海外の人とはやったことあるんですか?
畑:日本に来る外国籍選手とはやったことがあって。たぶん一番自分が一緒にプレーした中ですごいのは、コロンビア代表のビクトル・イバルボっていう選手。2000何年かな…何年かのワールドカップにも出てた選手で。その人とツートップを組んだりすることはありました。
生徒:なんでサッカーを始めたんですか?
畑:「本当?」って言われる理由なんですけど。自分が小学校1年生の頃にワールドカップがあって、そのワールドカップを見て、すぐにお母さんに「サッカーボール買って」って言って買ってもらったのがスタート。
生徒:白玉は好きですか?
畑:白玉? 白玉はあんまり好きじゃないかな。
生徒:サッカー選手にならなかったら、どんなスポーツの選手になりたかったですか?
畑:自分がプロサッカー選手になるって決まったのが大学4年生の冬、ギリギリにけっこう決まって。それまでは保育士になろうって思ってて。だからサッカー選手になってなかったら、保育士になってたかなって思います。
生徒:トレーニングはどれぐらいしてますか?
畑:トレーニング? 自分で?
生徒:自分で。
畑:チームのトレーニングが週4日、長くても2時間あって。そのあとやる人はすごいやるんだけど、自分自身あんまりトレーニングとか好きじゃなくて。週1、2で1時間半ぐらいの筋トレを、1回か2回やるかな。それぐらい。でもシュート練習とかそういうのは好きだから長い時間やるんですけど。筋トレとかは、ほかの人に比べたら短いかなって思います。
生徒:休みの日はなにしますか?
畑:休みの日は…子どもと一緒に遊びに行ったりサッカーしたり、後輩を家に呼んでご飯食べたり。そういうことをしています。
きょう話したことをみんなが少しでも自分の胸に持って、将来夢に向かうときに少しでも手助けになればいいかなと思うんで。きょうの話はここで終わります。ありがとうございました。
生徒:はじめて本物のサッカー選手と会えて、サッカー選手ってこんなにいまは輝いてるけど、昔はけっこう辛いこととか、練習とかで嫌なことがあったんだなって思いました。ありがとうございました。
畑:ありがとうございました。
* *
畑選手は随時確認をして生徒たちの反応を感じ取りつつ、内面を掘り下げるような問いかけをしていきます。
終盤で畑選手が「いままで他人に言われたりして、自分がこうだと思ってたことと、違うことをしちゃった経験がある子はいるかな? さすがにまだいない?」と問いかけます。ここで生徒たちが沈黙していました。たしかに難しい質問でしょう。エピソードを話そうにも、「他人」はすぐそばにいる可能性もあります。ただ生徒たちの沈黙の質は拒絶や断絶ではなく、その経験はあるがここでは答えられないという、ある種のコミュニケーションが成立していたように感じられました。畑選手の話の本質をしっかりと感じ取り、生徒たちがいまできるかぎりの反応を示したのでしょう。とても印象的なシーンでした。