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【札幌vs山形】レポート:流れはあれど、掴みきれず。要所で失点を重ねて3-6で天皇杯敗退。

■天皇杯 JFA 第104回全日本サッカー選手権大会 3回戦
7月10日(水)札幌 6-3 山形(19:00KICK OFF/NDスタ/3,347人)
得点者:6’田中克幸(札幌)16’狩野海晟(山形)19’大森真吾(札幌)33’後藤優介(山形)45+3’岡田大和(札幌)53’駒井善成(札幌)57’田中克幸(札幌)60’氣田亮真(山形)84’岡田大和(札幌)
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終わってみれば山形が3点、札幌が6点取った打ち合いのゲーム。
渡邉晋監督は「6つの失点にものすごい嫌悪感を抱いています」として、山形の3得点についても「6失点していれば、3点取っても意味はない」とバッサリ切り捨てた。
相手の力量を褒めるべき失点、こちらの守備対応のまずさを反省すべき失点、そもそもこちらのミス絡みの失点と内訳は様々だが、その多くが山形の追い上げムードを断ち切るような、流れを変えるような失点となってしまった。

リーグ栃木戦から中3日の山形は先発メンバーを11人入れ替え。ベンチにはリーグ戦3試合欠場していた後藤優介も入っている。
一方の札幌はリーグ鹿島戦から7人変更。原康介、駒井善成、田中宏武、馬場晴也の4人が連戦となった。ベンチには最大7人の枠に6人のみが入り、その中には札幌U-18所属の選手も3人入っていた。

札幌のフォーメーションは3-4-1-2で、山形のセンターバックにツートップを当てる形。攻守においてマンマークの意識が強かった。
序盤に勢いを持ったのは札幌。前掛かりに人数を割き、ダイレクトでパスを繋ぎながら攻めこまれると、3分にCKから馬場晴也から頭で合わされるも枠外。
6分に坂本稀吏也が背後を取られかけたところで相手を倒してFKを与えると、中央左寄りの位置から田中克幸に直接決められ先制点を奪われた。

札幌の流動的な動きと速いパスワークに順応する前に畳み掛けられ、相手を捕まえきれなかった中で押し切られた失点。フリーキックのシュート自体は素晴らしかったが、それ以外でもいつやられてもおかしくない流れだった。

反撃したい山形だが、その後も自陣に押し込められる。札幌のマンツーハイプレスを受けてクリアやパスが雑になってしまい、こぼれたボールをカットされてさらに攻め込まれ、コーナーから馬場晴也のヘッド、田中克幸のバー直撃シュートなどピンチが続いた。

山形はシュートまで遠かったが、16分に1点を返す。
左サイドで氣田亮真が起点になると、抜け出した後藤優介のクロスを狩野海晟が受ける。「いいボールが来たし、タッチもうまく決まった」と右足を振り抜いてプロ初ゴールを決めた。

これで肩の力が抜けてくれればと感じたのもつかの間、3分後にさらに突き放される。19分に、パスミスをきっかけに左サイドから攻め込まれると、田中宏武のクロスをボックス内で大森真吾に収められ、ターンからシュートを決められた。

札幌のマンツーマンハイプレスの打開策は4対4になっている札幌最終ライン付近。山形のサイドバックからは逃げ口がないので、フリーになれる藤嶋栄介からボランチの南秀仁や松本凪生、両ウイングやトップにボールを展開することが多かった。
「どうしてもセンターバックから出すところがない中で、途中からこっちも受け方を変えてセンターバックから僕が受けて、僕からトップ下や中盤のスペースを見つけて、ちょっとずつ流れは作れた」(藤嶋栄介)

中でも狩野海晟の足元にはスペースがあり、フリーになりやすくボールがよく集る。札幌も早いプレスバックで囲むことはあったが、安易なロストは少なく、前線の起点として機能していた。そこから山形もボールが動くようになり、札幌陣内でも少しずつ時間を作り始める。
20分に氣田亮真がカットインからシュート、31分に狩野海晟の速いリスタートで川井歩に繋いでから、その先で横山塁が左足ミドルとシュートが続く。
流れがある中で生まれた同点ゴールが33分、パスカットから細かく繋いでボックス内にボールを運ぶと、南秀仁のパスを受けた後藤優介が切り返しから右足でゴールを決めた。

その後も両チームチャンスを作る。37分に出間思努のシュートを藤嶋栄介が弾き、40分に横山塁が1対1から縦に抜いて得たフリーキックから、ファーサイドで南秀仁がヘッド。42分に、スルーパスに大森真吾から抜け出されてゴールネットを揺らされたがオフサイドでノーゴール。

前半アディショナルタイムは札幌の攻撃が続く。大森真吾のシュートを藤嶋栄介が弾くと、その後のコーナーも弾き返したが、クリアボールを拾われると、中央で岡田大和から強烈なミドルシュートを浴びて3失点目を喫した。

ハーフタイムを挟み両チームとも選手交代。山形は後藤優介に代わって有田稜が、札幌は馬場晴也に代わって坂本勘汰が入った。

雨足がさらに強くなった中、前半立ち上がりほど圧倒されたわけではなかったが、前線になかなかボールが入らず、札幌から押し込まれる時間帯は続く。
53分に中央右から駒井善成が出間思努とのワンツーでボックス内に侵入されると、そのままゴールネットを揺らされて4失点目。
さらに57分にビルドアップで藤嶋栄介が左サイドに出したパスが弱くなりカットされると、田中克幸に浮き球でゴールを決められて5失点目と一気に突き放された。

しかし60分、山形は菊地脩太からやや内寄りに絞って縦のパスを受けた川井歩がスルーパスを出すと、左サイドから中央に向けて斜めに抜け出してフリーとなり、キーパーとの1対1を制して1点を返す。スタジアムの反撃ムードは高まり、2点差でもまだまだ勝負を捨ててはいなかった。

63分、2回目の交代で横山塁に代えて杉山直宏、そして後半頭から出た有田稜を下げて加藤千尋を投入した。

ペースを上げていた札幌も少し動きが鈍り始めていて、この時間帯は山形に流れがあった。66分に杉山直宏のクロスに氣田亮真が走り込んだがシュートは打ち切れず。それでも山形の攻勢は続く。

そして72分のプレー。山形は中央から左サイドの氣田亮真へサイドチェンジが通ると、氣田亮真のクロスをボックス中央で加藤千尋が押し込んでゴールネットを揺らす。しかしこれがオフサイドの判定でゴール取り消しとなった。

「千尋がシュートを打ったときに、ナオ(杉山直宏)か誰かが跳んだ?たぶん、シュートを受けようとして跳んだのが、キーパーの邪魔になったかな?そんな会話は聞こえました」(氣田亮真)

「僕も詳しくわからないんですけど、キーパーの前で誰かがオフサイドポジションにいて邪魔をしたみたいなジャッジで取り消されました」(加藤千尋)

決まっていれば2点差から1点差に迫った勢いで終盤の猛攻へつながっていたはず。ジャッジ自体の正誤はともかく、試合の行方を分ける分水嶺となった。

その後の攻撃は尻すぼみになった感が強く、81分の松本凪生のシュートくらい。84分にビルドアップのパスがズレたところでショートカウンターを受け、岡田大和から6点目のゴールを決められた。
最終スコアは3-6。壮絶な打ち合いの末に、今年の天皇杯は3回戦で姿を消すこととなった。

「オフサイドがあったかどうかはわからないですけれども、あのシチュエーションじゃなかったとしても、我々が4ー5にすることができれば、結果は違うものにできた」(渡邉晋監督)

オフサイドのゴール取り消しは流れを変えた大きな分岐点の一つではあるが、分岐点はもっと前にもたくさんあった。

まずは「入りのところで札幌さんの前に来る攻撃を受けてしまったところが全て」(藤嶋栄介)という、攻守で受けに回った序盤の時間帯。
1点を返したあと、パスミスが絡んでサイドからシンプルなクロスで決め切られた2失点目。
2-2のまま後半に臨みたかった前半アディショナルタイムの失点。
1点を追加された直後のパスミスによる5失点目。
そして、オフサイドが取り消しになったあとにミスからカウンターを受けた6失点目。

与えたくない、我慢しなければいけない大事な局面や大事にしたい時間帯で、山形の選手たちは自分たちのミスも絡んで安易に得点を与えすぎてしまった。

「千尋のゴールがオフサイドかどうかは抜きにしても、ものすごく重要な次の1点だったと感じています。それが相手に渡ってしまったのであれば、それはもう我々は勝ちというものには到底たどり着けない」(渡邉晋監督)

山形もチャンスは作れていて、実際に3得点はできた。パススピードや寄せの強さ、技量の差はあったが、それでも山形らしくボールを動かしながらスペースを使うサッカーもできていた。
何もできなかったわけではなく、もっとチャンスで決めていれば、という見方もできる。

しかし、それ以上に勝利に近づく可能性を自ら手放した印象のほうが強いゲームとなってしまった。

文 嶋守生

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