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【全文無料】相田健太郎社長がシーズン移行検討について語る「リーグが考える方向に対して一緒に考えて、議論に参加したい」

5月31日、モンテディオ山形相田健太郎社長が今Jリーグで取り上げられている秋春制移行に関して、メディアに向けた説明と囲み取材に応じた。
サポーターの方々も賛成反対意見はそれぞれあるだろうが、まずはフラットに秋春制議論の現状とクラブ側の考えを知っていただくために、全文を掲載する。
※デリケートな問題でもあるので、誤解を招かないよう軽い整文までに留めてあります。


●はじめに相田健太郎社長から

昨日(5月30日)、理事会で第2回目の秋春移行の話がありました。いろいろと皆様にも情報が入っていると思いますが、基本的にJリーグの方では競技面の改善を目的に秋春移行をした方がいいんじゃないかという議論を始めましょうとなっています。まだ何も決まっているわけでもなく、決まっているのは協議を始めますということだけです。
実行委員会でもそうですけど、僕はどちらでもいいと思っている側の人間です。理由はその協議をするカレンダーを実際に見せていただいた時に、ウィンターブレイクが12月末から2月中旬まで入っている状況ですので、「12月の3週目4週目あたりが課題ですね」という意見はさせてもらってますけれども、それ以外に関しては今現状正直変わらないです。
なので、正直な話、多くの方が騒いでいる理由をあまり理解できていなくて、逆に教えて欲しいぐらいなんです。

すごくありがたいのは、「経営大丈夫でしょうか」とサポーターの方が心配してくださっていること。いろいろな断幕も出てましたけれども、基本的には何も心配はしていなくて、夏場のキャンプは地元の山形県内のどこかでできますし、それこそいつもだとシーズン中の時期に行けない場所で何かができたりとか、ファンの方と触れ合う時間が増えたりとか、ポジティブに考えればそっちの方がいいなと思っています。
冬期間は今でもそうですけれども、静岡からスタートして千葉の方に最終的に拠点を張ってキャンプをやっています(補足1)。そのあたりも実は競技者も含めるとメリハリが出るんじゃないのかなと正直感じているところがあります。

なので、我々のクラブとしての課題は、12月中旬以降の試合がどうなるか。中旬も正直ちょっときついかもしれないですけれどもそこと、あとは冬場の試合をどうしてもこっちでやらなきゃいけない状況が出たときにどうなるのか。
あとは5月末から6月1週目ぐらいがシーズンの終了になりますが、年末からシーズンがブレイクに入る前はアウェイの試合になると思うので、アウェイの試合が2、3試合あって、また再開したときの4試合ぐらいがアウェイとなること。アウェイ連戦がシーズンの最終盤に向かっていくタイミングでそれだけ重なることが、どういうふうになるのかというのは一つ課題かなとは思います。
ただ、通してみるとさしたる影響じゃないとは思っていますので、基本的に我々のクラブとしては、降雪地域ではありますけれども、リーグが考えている方向に対して一緒にしっかりと考えて、議論に参加したいと思っています。

もう一つは、12月から2月末ぐらいまで、我々だけじゃなくてその降雪地と言われているところはものすごく内にこもってしまう時期だと思うんですね。
特にフィールドスポーツ、僕らもそうですけど、こういう外でやる競技をやっている人たちは競技環境がないんです。今回リーグにしてもJFAにしても、室内練習場の整備も前向きに考えてくれていますし、むしろそれが我々の方に得られるのであれば、ある意味冬場をもっとアクティブに過ごすことで山形県という地域の経済がもっと活性化するとか、人が外で動くことの新たな世界観みたいなことを、我々がきっかけになってご提供できるのであれば、僕はそっちの方が地域にとってはすごくポジティブだと思っていますので、基本的に反対する気は一切ないです。

実は先日、熊本で試合した時(5月28日)に先方の社長とお話したところ、九州は九州で、この時期から8月までの時間は相当きついとおっしゃってます。夜だったとしても。そこも一つ課題にはなるので、降雪地域のことだけがすごく取り上げられがちですけれども、気候変動も非常に激しくなってますし、日本のどこでも、どこの時期でも課題があるのは四季がある以上あり得ることだと思いますので、そこはそれぞれの意見を聞くべきかなと思っています。

リーグに所属する以上、最終的にはクラブはそこに従うしかないと思っています。できることできないことの意見はしますけれども、最終的に僕は企業努力だと思っていますので、企業としてモンテディオ山形という会社がどういう努力を地域の方やステークホルダーの方とやっていくかがすごい重要なことだと思っています。そちらの方が我々が考えなきゃいけないところかなと思っています。
やるならやるで早く決めていただいた方が準備ができるので、そっちの方が我々としてはありがたいと思っています。

(補足1 モンテディオ山形は、例年1月上旬に山形に集合してフィジカルテストやファンイベントなどを行ったあと、1月中旬の静岡キャンプから本格的なプレシーズンのトレーニングに入り、2月下旬まで長期キャンプを続けている。

●質疑応答
Q:まず確認ですが、4月の報道ですと、ウィンターブレイクは1月中という話がありましたが、12月末から2月下旬というのは?

2月下旬ではなく2月中旬です。要するに今と変わらないです。そのカレンダーを見せられています。それは多分昨日メディアさん向けの話でも出しているはずです。(補足2)
そこを見ていただければわかると思うんですが、12月の3週4週がなぜ駄目なのかは、ACLとかワールドカップの予選とかの絡みが出てきているのも事実で、そこはどうしてもそうせざるを得ないというのが今の判断なのと、事業的なことを考えたときに、平日のゲームが増えるより、土日祝日が多い方がいいという事実もありますから、そこを考慮した上でそういう形にはなってると思いますけれども、当然これからの議論でどうなるのかはまだまだ余地があると思います。

(補足2 5月30日付第5回理事会後会見用の資料では「12月3-4週頃まで開催/2月1-2週頃から再開。その間はウィンターブレイク」とある)

Q:ウィンターブレイクとシーズンオフで、オフの期間が二つあって通常の日程が締まります。

そうですね。なので平日の開催が増えるんじゃないかなというのもありますし、逆に日程が密になることで、選手のフィジカルがどうなるのかなというのも当然あると思います。
一方、当然なんですけど、冬場に試合をすることであまりに寒いと筋肉系のトラブルが出てくる可能性もゼロではないので、その辺はどう考えるのかは今後の課題です。
ただ今、サッカーのカレンダーがものすごく大きく変わっていて、我々が想像している以上に、J1の、特にACLに絡んでくるであろうクラブは相当ご苦労されているというのは、話を聞く限りすごく感じているので、それは日本のチームのレベルが上がっていくことを考えるとそうせざるを得ないんだろうなというのもあります。
あとはこの前、浦和レッズさんがACLで優勝したのはすごい嬉しい反面、やっぱり去年のメンバーと監督じゃない方で戦って優勝する、多分やってる本人たちも見てる側は勝ったから良かったかもしれないですけれども、多少の違和感があるというか。勝ったことは嬉しいんですよ、それは大前提ですけど。
だからそういうちょっと頑張ってきた人が報われる状態を作ることも考えたら、その考え方に至る理由は十分あるんだろうなというふうには思います。

Q:ルヴァン杯や天皇杯など他のカップ戦も入ってくると、また日程が詰まるのでは?

そこは今何かが決まってるわけではないので。そういったものすごくミクロな話はまだしたくないです。現段階で決まっていることは、秋春移行に対して何がポジティブで、何がデメリットで、それをまずはっきりさせて議論をしましょうということだけです。それ以上でもそれ以下でもないです。
だから、日程が詰まるから困ってますなんて、僕は今一言も言ってないですし、可能性の話はしましたけど事実は全くなくて、決まっていることは協議をすること、それだけです。

降雪地域のクラブの意見としては、カレンダーを見る限り、そんなに不平等な状況になっていないので、前向きに捉えてちゃんと議論に参加しますということだけが今言える事実だと思ってもらえればいいと思います。

Q:先程、12月3-4週のときにもしかしたらホームでやるかもしれないという話がありましたが、冬季キャンプで関東に行ってるのにホーム戦だけ山形に帰ってくるというちぐはぐな状況があるかもしれなくて、そうなったら大変だという意味ですか?

そんなに大変だとは思ってはいないです。実際、コンサドーレさんは今そうしているので。開幕を彼らは2月からやってますけれども、キャンプ地からホームゲームでまたキャンプ地に戻るというサイクルで動いているので。
ただ僕らの場合はスタジアムが難しいかどうかだけですね。そこがどうかなというところだと思います

Q:室内競技場の話が出ましたが、先程の話を聞く限り、ある程度JリーグなりJFAから支援があって室内競技場が建てられるなら、みたいな捉え方をしましたが、多少なりともそういう話が出ているのでしょうか。

ご想像にお任せします。ゼロではないです。それはもうチェアマンのコメントでも出たと思いますけど、冬に雪の降る地域の、Jリーグのチームだけじゃなくて、高校生中学生小学生、一般の社会人の方もそうですけど、サッカーをやってる人もそうかもしれませんが、例えばこのグラウンドに全面屋根がかかっていたとしたら、陸上の人は走りたいでしょうし、野球をやりたいとかもあるかもしれません。
最初は当然サッカーでスタートすると思いますけれども、そういうものができたときに、可能性を感じられる方が素敵じゃないですか。
だから僕はそこはJリーグとJFAに期待していますし、そうしてくれることだろうと、勝手にものすごく強く思い込んでます。でもそういうことがないと、なかなかきついだろうなとは正直思いますから、そこはそうして欲しいと思っています。我々の身銭を切ってそれを作れと言われたら「いやいやふざけんな」とは思いますので。それが僕なりの回答です。

Q:今後についてですが、議論が進むとスタンドで「反対~」といった断幕が出ることもあると思いますが、ホームページなどで説明というか発信していくことはあるのでしょうか。それとも今日の取材をもってある程度意思表示とするのでしょうか。

実は今日、僕はサポーターさんともお会いするんですけど、同じお話はします。で、どうなんでしょう。何も決まってなくて議論を始めるだけなので、何かWebサイトで公式の言葉を出すことが果たしていいのかどうかもちょっとわからなくて。
なので極論、今僕がお話していることをメディアの皆さんがそのまま伝えていただければそれで十分だと思います。僕個人の意見ではなくて、会社の中でも話をしていますし、現場とも話をしていますし、それをトータルした上でのモンテディオ山形としての答えが、今お話した内容ではあるので。出した方がいいですかね?

何か出した方がいいんだったら出すべきかなとは思いますが、多分、やると突っ込みどころ満載にしかならないと思っていて、表面のワードだけを捉えて嫌な動き方をされるのってすごく嫌なんですね。
なので、事実をしっかり捉えた方がしっかりとした意見を持ってお話に来られるのであればちゃんと聞こうと思うんですが、少なくとも今僕らは24時間この仕事をさせていただいてもらっている中で、今回のいろんな課題も見せられた中で、検討する余地がないとは言えない内容だなとは思います。
一番、対外的にファンの方たちに届きやすい形がちゃんと見つかった方がいいかなとは思うので、ちょっと考えます。
でも、基本的には今お話させてもらっていることをしっかりお伝えいただければそれでいいのかなというふうには思います。

Q:冬期間にリーグの試合が設定されると、どうしてもホームゲームとアウェイゲーム試合数の偏り、山形だったら冬季間にアウェイゲームが増えることは起こり得ると思います。そのあたりの話はこれから議題にあがりそうですか?

上がると思いますよ。ただ、今もそうですけど、冬場に試合ができないということは、極論、クライマックスと始まりはホームでできるというのも、ある意味美味しいんですよね。だからそこは決してネガティブなことだけじゃないのかなと思います。

Q:冬場に試合を観るサポーターも大変だと思いますが、そのあたりの環境はクラブとしてどう対応したいですか?

スタジアムが今のままだと、今まで通りの対応になってしまいますよね。12月末はやったことないですけれども、12月1週目はここで最終節やったことが全然ありますし。
ただ、その中でできる範囲のことはやっぱりやるべきかなとは思っています。配慮がないという言われ方をしてしまうとすごく寂しいなと思うんです。
今のやり方しかできないことでのメリットもデメリットもあるじゃないですか。秋春に変わったときのメリットデメリットも当然あって、事業的な話とか経営的な話をすると、正直な話、今のやり方じゃない形に変わったときに何か新しい可能性が見えるんだったら、僕はそっちの方がチームの経営規模とか層が拡大できるんだったら、そっちに振った方がいいかなと思います。
進むことの不安がすごくあるのはわかりますし、基本的に僕はチャレンジしないと物事がわからないですし、止まること自体、停滞はもう退化だと思っているので、基本的にはそうなりたくないです。
変化にちゃんと合わせて成長していくことが、多分会社として一番やらなきゃいけないことだと思います。
数の論理で片付けることは多分ないと思うんですよね。かといって、少数派がずっと言い続けても、これは皆さんにも理解していただきたいんですけれども、リーグが多分停滞するというか、ものすごく駄目になってしまうような気はします。
というのも、プレミアリーグとJリーグって大体同じタイミングで始まったときには同じ経済レベルで動いてましたけど、プレミアはあっという間に3倍4倍5倍と伸びていきましたよね。
彼らは変化するし、なかなか無理な日程でも、さすが外国人は合理的だなと思って見てるときもありますけど、こういうことをやっちゃうんだっていうこともやるんですよね。
でも悪いとすぐ変化をさせるの。そういうところは、日本人のカルチャーとしてすごく受け入れ難いところもあるかもしれないですけど、冷静にいろいろ考えた中で、これだったらいいんじゃないかというのがちゃんと見いだせるんだったら、それは進むべきだろうと思いますし、それをダラダラやるんじゃなくて、ちゃんと期限を切ってちゃんと議論すべきかなと思います。
早ければ2026年の夏開幕みたいな話を昨日もされてましたけど、ある意味、最短で考えた場合のスケジュールなので、おそらく今年中に議論が終わらなければ伸びる可能性もゼロじゃないでしょうし、それは引き続きやる意味があるんだったら、そういう検討していくと思います。ただダラダラする話でもないかなというのは個人的には思います。

Q:雪国のクラブとしてみたときの、秋春制へ移行するメリットは何かありますか?

ファンサービスとして夏場にファンの方とお会いする時間が増えることです。僕らは冬場スタートしてからすぐいなくなるじゃないですか。でも立ち上げのときからこっちでキャンプをやれば、地元のファンの方にもお会いできますし、それはものすごいメリットだと僕は思ってますし、地域にとってもいいことだと思ってます。
冬場ここに残っていることは僕らはないので、1ヶ月半外に出て、地域の方たちにお会いすることもないまま、何となくクラブとしては良くないですけれども、3月中旬まで(補足3)Jリーグが始まってないと思われがちなんですよ。その空気感が僕はすっごく大嫌いで。そう考えると僕は夏に動き始めることというのは、僕らにとっては、すごいメリットがあるとは思っています。

(補足3おそらく県外に出るキャンプ中やリーグが開幕する2月中旬頃から、モンテディオ山形がホーム開幕戦を迎える3月中旬ころまでアウェイの連戦が続くことを指すか)

Q:秋春制のスタートと新スタジアムの開場はリンクさせたいですか?
一緒になるといいですよね。

●囲み取材の後に相田社長から。

何度も言うように、今決まってることはウィンターブレイクがちゃんとあって、これからその細かいところに関しての協議がちゃんとあって、まだ何も決定していなくて、協議を始めますということだけです。
クラブの意見としては、カレンダーを見る限り、いろいろ事業的なことを考える限り、やる分には別に問題がないと思っているのが基本的な部分で、そこはファンの方へのサービスも含めて、試合を見る環境も全部含めて、今と大差があるならば考えなきゃいけないですけど、そんなに大きな差がないと思っていますので、今の事実としてはそこだけです。

文 嶋守生

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