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【山形vs岡山】プレビュー:イレギュラーだらけの再試合、レアケースを勝ち切れ!

■明治安田生命J2リーグ 第8節
8月31日(水)strong>山形vs岡山(19:00KICK OFF/NDスタ)
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試合前日の8月30日、「8.31岡山戦のチーム指揮について」とのクラブリリースがあった。ピーター クラモフスキー監督のコロナ陽性となり自宅療養中であることと、佐藤尽コーチが指揮をとることが発表された。

8月18日から25日までほぼ連日、トップチームにコロナウイルス陽性判定があったとのリリースが続き、前節・大宮戦は規定のエントリー人数13人の確保が困難となり、中止に追い込まれた。この間に陽性が確認されたのは選手7人、スタッフ7人。29日にはさらに選手一人の陽性判定が発表されている。特にスタッフは15人中7人と約半数が陽性となっていたが、そのうちの一人がクラモフスキー監督であることが試合直前になり、発表された形になる。いつ感染したのか、症状がどうなのかは明かされておらず、この間、どの程度チームの活動に関われたのかは不明だ。

佐藤コーチについては、昨シーズン、石丸清隆監督解任からクラモフスキー監督が現場に立てるようになるまで、4試合で監督として指揮をとり、その後の快進撃の足がかりを作っている。また、今シーズンも練習試合やJエリートリーグでは指揮をとってきた。

また、クラブでは高山明泰強化部長、内山俊彦ユース監督をコーチとして、斎藤武志アカデミーGKリードコーチをGKコーチとして、それぞれトップチームに登録し、急場を凌ぐための手を打っている。ベンチ入りするスタッフ陣の顔ぶれもいつもと違うものになりそうだ。戦況分析や選手交代などの采配を的確に行うことができるか、ベンチ内の連係も試される。

大宮戦では中止に追い込まれたが、今節は開催に向けてクラブも着々と準備を進めている。感染者や濃厚接触者の復帰、あるいは負傷離脱した選手の復帰などで開催の目処が立ったのだろう。ただし、この間、紅白戦など実戦に近いメニューが消化できていない可能性が高い。また、陽性判定となったスタッフの内訳は公表されていないが、スカウティングや個別トレーニング、あるいはトランスレーションなども含めて影響が出ている可能性もある。そうした困難を乗り越えながら、今節の一戦を迎えることになる。

4月3日の試合は、ゴール方向に向かったバックパスをGK後藤雅明が手でかき出したことで一発レッドで退場とされた。試合はそのまま続けられ、数的不利の山形が互角以上に戦ったものの、アディショナルタイムに木村太哉のゴールで0-1で終了。しかし、後藤への退場処分が競技規則の適用ミスと認められ、試合のわずか2日後、Jリーグの臨時実行委員会、臨時理事会で再試合となることが決定した。日程やレギュレーション、無効試合の記録の扱いなども順次決められ、再試合は11分、岡山のゴールエリア内の間接フリーキックからリスタートされる。

「試合に関しては、前半、山形さんの方に一人退場者が出て、早い時間で一人多くなったゲームの中で、一人少なくなっても山形さんのほうがボールを持つときのポジショニングだとかで少し困らせられることが多くて…」

4月3日、90分の試合を終えた岡山・木山隆之監督の会見コメントだ。最後の最後に1点をもぎ取り勝った形だが、試合内容に関するコメントは謙虚なものが多かった。
「我々、本当にまだ赤ちゃんみたいなチームで、課題もたくさんあるし、そのなかで本当にめざしていく場所があるならどんどん成長していかないといけないチームだと思う」

岡山はこの一戦後、25試合でわずか4敗。着実に勝点を重ねながら、シーズンを折り返す手前からプレーオフ圏内に定着している。今節で勝利すれば、仙台を抜いて3位に浮上。横浜FC、新潟を追い自動昇格に望みをつなぐためにも重要な一戦と位置付けられる。

2節前、横浜FCとの直接対決は6ポイントマッチとして、フォーメーションを変更して臨んだが、18日に選手1人、試合直前にも選手6人がコロナ陽性判定を受けている。横浜FC戦は拮抗した展開に持ち込んだが、0-1で惜敗。しかし、続く前節・群馬戦では、前線からの守備で相手のパスミスを誘い、ミッチェル デュークが無人のゴールにミドルレンジからシュートを流し込んだ。この2戦はいずれもアウェイゲーム。今節は群馬戦から中2日、アウェイ3連戦となる。横浜FC戦から群馬戦にかけて、不在から戻ってきた選手はいるが、アウェイ連戦の中2日、さらに復帰する選手がいるかは不明だ。

11分からの再試合、ゴール前からの間接フリーキックでのリスタートというイレギュラーな状況のうえに、コロナによってさらにカオスの要素が増している。そして両チームは、9月10日に岡山でまたも相まみえることになっている。誰も見たことがない80分(+アディショナルタイム)が始まろうとしている。

●勝敗のポイント1:なんとしてでも冒頭の間接フリーキックを止める、話はそれからだ!

とにかく、いつもとは違う一戦だ。イレギュラーなことが多いうえ、11分から再開となっているが、メンバーも違えば時間も違う。4月3日との様々な違いについてはここにも記したが、ここはその状況にアジャストしていくしかない。

なかでももっともイレギュラーな事態は、間接フリーキックからのリスタートということだろう。しかも岡山のボールが置かれるのはゴールエリア内。ゴールマウスからの間接フリーキックは、距離が近過ぎることに加えて、レアケースゆえに専門の練習などもほとんど行われていないため、決まる確率は低い。ただし、今回は事前に開催概要が発表されている。岡山は前節から中2日と短い時間とはいえ、多少は準備に時間をかけることはできただろう。

そして、いくら確率が低いとはいえ、至近距離から強烈なシュートを打たれる可能性があるシチュエーションは、モンテディオ側にも大きなストレスを与えることになる。再開の初っ端に失点することがあれば、残りの80分はどれほど苦しいものになるか。ボールからの距離が必要なため、前回同様、ほぼ全員がゴールマウス内のゴールライン上に並び、そこからボールに体を寄せることになるだろうが、いかにタイミングを合わせ一体感をもってアプローチできるか。そして、ボールに対して正面から体を当てることができるか。当然、岡山はそのタイミングをずらし、隙を作ろうと手を尽くしてくるだろう。それでもなお、一体感を維持したい。

試合中に至近距離の間接フリーキックとなった場合、ある程度、アドレナリンが出た状態で迎え撃つことができるが、これがプレーの蓄積のない試合の入りではどうなるか。さらに、ゴール裏で行われるサポーターの声出し応援が両チームにどのような影響を与えるか。さまざまなケースが考えられるが、どのような状況であっても防ぎ切らなければならないことに変わりはない。

●勝敗のポイント2:試合を通して求められる、守備での一体感と献身性

岡山は多くの試合で守備から入るチーム。ボール保持を得意とする相手に対して強く守備をするところからリズムを作っていく。逆にボールを持った際には、自陣ではリスキーなボール回しを極力避けながら、フィードに長けたヨルディ バイスと、ボールが収まるミッチェル デュークのホットラインで、まずは相手陣内でのプレーに持ち込むのが主要なパターンだ。

岡山が後ろで回している間にボールに連動したプレッシャーがかかれば、そして、蹴られてもファーストで競り、セカンドを回収できれば、モンテディオが主導権を握ることができる。逆にデュークに収められ、そこに周囲の選手が関わってくるようであれば岡山のシュートチャンスも少なくないだろう。岡山はゴール前での強さを生かし、多少精度が悪くてもシンプルにゴール前にボールを入れてくる。それを跳ね返し続けることができるかどうか。特にファーサイドで合わせられるケースはかねてからの課題。戻るべき人が戻るべき場所に戻る献身性は試合を通して求められる。

モンテディオは前回同様、攻撃では中盤で相手のスペースを使うことはできそうだが、最後の3分の1で決め切れるか、スコアを動かすことができるかが重要になる。

●勝敗のポイント3:最後は気持ちの勝負

4月3日の試合は、審判員の競技規則の適用ミスが認められ、再試合となったが、試合自体は最後まで続けられ、土壇場で1点をもぎ取った岡山が勝利して終わっている。岡山にとっては、一度手にした勝点3を取り消されたとの思いもあるだろう。今節の試合結果が前回の試合結果を証明することにはならないが、勝って前回の勝点3の正当性を主張したいとの思いはあるだろう。

だが、そもそも試合は正当に成立していない。だからこそ、競技規則の適用ミスを受けて11分からの再開との裁定が下された。本来は11人で戦える試合で1人減らされ、それでも残る約80分を最後まで、互角以上のパフォーマンスで勇敢に戦い続けたチームはどちらだったかを思い起こしたい。

ようやく調子が上向いてきた当時、シーズン2勝目は翌第9節に持ち越されることになった。秋田戦の5-1を皮切りに9戦負けなしで一気に順位を4位まで上げた。

この一戦に関しては、互いに悔しい思いを抱えている。試合展開も拮抗したものになるだろう。最後は気持ちの勝負になる。

(文・写真=佐藤 円)

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