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【ランダムフォーカス】涙~山田拓巳選手


悔しい悔しい結果に終わった天皇杯準決勝。立ち上がりに力の差を見せつけられたものの、下を向くことなく1点差まで詰め寄っただけに、試合終了直後の選手たちの姿からも、その悔しさ、やりきれなさが伝わってきました。涙を隠すようにベンチコートのフードをかぶり、ピッチを後にしていく選手も何人か見られました。

それでも選手たちは、試合後のミックスゾーンではいつもと同じように取材に応じてくれました。キャプテンの山田選手も、少し目を潤ませたままではありましたが、テレビカメラの前に立ち、試合のこと、ダービーの雰囲気、来季への思いなど、一つ一つの質問にしっかり答えていました。

ただ、最後に「キャプテンとして周りの人に伝えたいことは?」と問われると、こみ上げる思いを抑えきれずに涙が。

「正直、キャプテンとしてそんなに仕事はしてこられなかったと思う。その中でみんな文句も言わずついて来てくれた。自分の力のなさをすごく感じたシーズンでもあったので、この悔しさを来年につなげて、個人としてもチームとしても今年以上の結果が出せるように、来年また努力してやっていきたいと思います」

また、この日のユアスタには、メンバー外だった選手たちも駆けつけていました。そのことについて質問すると、ロッカールームで全員で円陣を組み、試合に臨んだことを明かし、こう続けました。

「ここまで来るには本当に全員の力で上がって来たというのもあったし、怪我で出られない健さん(加賀健一選手)だったり……まっちゃん(松岡亮輔選手)を決勝まで連れて行って、なんとかいい形で送り出したいという気持ちもあったし、もしかしたら決勝の舞台でまっちゃんにも出番があったかもしれない。そこまでなんとかつなげていきたいなという気持ちもあったので……悔しいですね」

「まっちゃん」と口にしようとして、また涙が込み上げて来る山田選手。最後はもう、こぼれ落ちる涙を止めようともしませんでした。

試合後、木山監督も選手たちに「今日の悔しさを忘れないように」と話したそうですが、忘れたくても忘れられない悔しさ。山田選手ならきっと、この涙を胸に刻んで、来シーズンはまた一回り大きく成長した姿を見せてくれるに違いありません。

文・写真:頼野亜唯子

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