西野努(前浦和レッズTD)ロングインタビュー「クラブだけでなく、クラブを取り巻くすべての人々との経験を通じて次の一歩に進むことが大切」
浦和レッズに2019年11月にフットボール本部が立ち上がり、テクニカルダイレクター(TD)として、浦和レッズの強化に新たな風を吹かせた西野努さん。足かけ5年間、レッズの強化に勤しみ、2024年6月にサポーターも惜しむ中でチームを離れることになった。「自分が出来たこと、出来なかったことをしっかりと伝えることで、今後のクラブの成長に繋げてほしい。それはサポーターにも伝えておくべきこと」と、今回、西野努さんに、これまでの活動を振り返っていただき、今後のレッズへのメッセージも語ってもらった。(Interview by 河合貴子)
―6月いっぱいで、浦和レッズのTDを辞めることになりましたが、なぜこのタイミングになったのでしょうか。
自分がここに居続けることが目的ではなく手段だと考えていたため、チームの成長が重要だと思っていました。プロ契約には期限があり、私がずっとここに居続けようと思っていなかった部分もあります。6月末に辞めることが大騒ぎの原因となりましたが、いつかはその立場になると考えていました。今回は様々な理由があり、このタイミングで契約を解除することになりました。
―これまでを振り返ると、西野さんは2019年11月に浦和レッズのTDとなり、その後フットボール本部として立ち上げた3年計画は、後ろ倒しになったと感じていますが、コロナ禍の中でも順調に進んでいったと思います。最初は大槻監督で土台を整えた印象があります。
振り返ると、2020年シーズンの1年目は何もできなかったと言わざるを得ません。フットボール本部の戸苅、土田、西野の全員が強化の仕事が初めてだったため、まずは業務の流れや契約のフローを理解することに専念しました。さらに、すぐにコロナ禍が始まり、編成に関しても後手後手となり、1年目は標準レベルに到達するのに1年かかったように感じています。
―そこから少しずつ計画が実行されるようになったと思います。
今回、辞めるにあたり、クラブには振り返りの資料を作成し、残しました。それを振り返ると、コンセプトを掲げて選手や監督を編成し、PDCAサイクルを回すという部分はしっかりと実行してきたと思います。「強化の強化」がテーマだったので、強化体制はかなり強化できたと感じています。その意味では、唯一の不満はリーグ優勝を達成できなかったことですが、この組織がこのまま継続的に成長すれば、その目標は達成できると信じています。
―2年目には、このクラスの選手たちで大丈夫かと思うこともありましたが、その選手たちが適応し、リカルド監督の下で力をつけていきました。スコルジャ監督に移行する流れもありました。
当時、引き継いだ際に、選手予算の中でコロナ禍の影響で3年連続で削減せざるを得ず、その中で優勝を狙うという目標設定をしました。若くて、市場で評価されていない選手を獲得し、成長させて戦力にし、移籍金を得るというプロジェクトを進めました。その一例が、今年の明本考浩選手の海外移籍です。2020シーズンの締めのミーティングで、ある選手から「強化の人に一つ言いたいことがある。J2の選手をたくさん獲得しているが、優勝する気があるのか?」と言われたことを覚えています。しっかりと説明しましたが、選手とそのようなやり取りができることも嬉しかったです。
―少しずつ選手を入れ替えながら結果も出し、3度目のACL優勝を果たし、クラブワールドカップにも出場しました。
ACL優勝はコロナ禍の影響でラッキーな部分もありました。グループステージはタイのブリーラムで集中開催され、ノックアウトステージは埼スタで開催されました。JFAやJリーグの協力もあり、実現したことです。アルヒラルとの決勝戦では、アウェイの雰囲気が非常に厳しく、選手たちがゲームの入りで浮つくのも理解できました。1点目の失点もあり得ないものでした。中東でのアウェイは特別で、楽しい反面、厳しさもありました。その経験がまたやりたいと思わせるものだと思います。
―それが選手のスキルアップに繋がります。
そう思います。選手たちは素晴らしい経験をしていると思います。昨年のクラブワールドカップで、満員のスタジアムの中でマンチェスターシティと対戦した経験は本当に貴重でした。クラブやサポーターにとっても、あのような経験がチームや選手を成長させると思います。毎回出場したいと心から思っています。
―今年の冬の補強については、良い選手を獲得して夢を見ましたが、怪我人が続出したのは予想外でしたね。
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