浦レポ by 浦和フットボール通信

もったいなさも良い部分もあった試合 斜めの前進を増やしたい【轡田哲朗レッズレビュー/ルヴァン杯湘南戦】

(Report by 轡田哲朗)

ルヴァン杯をリーグ戦への投資に使う意図は見える

浦和レッズは3月8日にルヴァン杯の開幕戦で湘南ベルマーレと対戦し、0-0で引き分けた。試合中に2人選手を負傷で交代させなければいけないアクシデントがあり、今季初の3バックとの対戦、大幅なターンオーバーにより今季初の公式戦という選手が少なからずいるという状況の中で、そんなに悪いものが多かったとは思わない。マチェイ・スコルジャ監督も「レッズの選手のパフォーマンスはかなり良かったと言えると思います。メンタルの面でもそうでしたし、戦術的にもしっかりと規律を守り、特にペナルティーエリア内での守備が良かったと思います」と話したが、同意できるところは多かった。

マリウス・ホイブラーテンを除くと10人がスタメン入れ替えとなった。マリウスに関しては2月上旬の来日からコンディションをさらに高めていく必要があるという状況にあったので、日程的な厳しさを覚悟してでも少しプレータイムを確保した方がいいという判断だったのかもしれない。髙橋利樹の負傷によって前半15分に小泉佳穂を投入してから残り75分間、小泉に代えて興梠慎三を入れたのが後半25分でありプレータイムを2人で分担させたことからも、ルヴァン杯を少なからずリーグ戦への投資に使っている部分を見せたと言ってもいいだろう。プレビューで月曜日に行われたマチェイさんの会見を紹介したように、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)出場権の懸かったノックアウト方式の天皇杯であれば、また違った判断があっただろうことは想像できる。

対3バックというところでいくと、どこかで5枚に幅を合わせるようなやり方ではなかったものの、4枚のままスライドして役割で合わせていくという点でサイドの選手たちに多少の負担を強いるような形になっていたが、サイドチェンジをさせないような守り方が機能した部分もあり5バックで撤退するようなやり方をしないで済んだ。攻撃のところでも前にボールを運ぶところでは昨季までにリカルド・ロドリゲス監督の指揮下で見たことのある位置取りがいくつかあり、5-3-2でブロックを作る相手に前進しようとすれば自然な流れではあるものの、平野佑一を中心にした持ち運びのところでは継続性がどうのこうのというよりは経験値として生きた部分も感じられた。
< h2>サイドを変えさせない守備はまずまず機能していた

マチェイさんが「湘南に特化した戦術」と表現していたが、まずは相手ボールに対する合わせ方から見ていきたい。3バック+アンカーでの前進に対して、トップ下の安居海渡がアンカーをマンマークする役目を負う。1トップは3バックの中央に対して出て行くが、ここで大事なのはこの縦の2枚がサイドチェンジをさせないこと。GKなりスタートにあたる3バックの中央なりがどちらかのサイドにボールをつけた時点から、この2人が壁を作って逆サイドへの展開を切る。その上で、3バックの両サイドに対してはボール側のサイドハーフが出ていき、ウイングバックにはサイドバックが前ズレする。この時の距離感でサイドバックが出ていくのが厳しければサイドハーフが2度追いするので、ここの前後運動の負担は大きいけれども、浦和の選手たちは少なからず忠実に役割を果たしていたと言っていいと思う。

試合を通してみていれば、「そこで逆に持っていかせちゃまずい」という場面がゼロではなかったけれども、全体的にサボらずやっていたのは間違いない。そして、自陣まで前進を許したような場面ではサイドバックとセンターバックの間が課題になるが、このプレスの名残でサイドバックが高いときはセンターバックが積極的にスライドして埋め、逆にスローな前進を許した時はボランチが間を埋めるという役割分担はハッキリしていた。リーグ戦の開幕3試合ではここの守り方がなかなか大きな課題になっていて、それは沖縄県トレーニングキャンプでも確認していた部分なのだけど、この日のメンバーはその原則をかなり守っていたようには見える。当然、相手のクオリティーがかなり違うので一概に比較はできないけれども、逆に攻撃の局面で同様の場所を取りにいくような意識もこの日のメンバーは強かったように見えた。セレッソ大阪戦で荻原拓也の動きを紹介したのと同じように、そうした部分も含めてマチェイさんは「戦術的にもしっかりと規律を守り」と表現したのではないかと思う。

昨季までの経験値も感じさせた前進と、「ニア潰れ」の不足

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