浦レポ by 浦和フットボール通信

戦術は勝つための工夫 すでにあった引き出しの組み合わせ【轡田哲朗レッズレビュー/J第32節鳥栖戦】

(Report by 轡田哲朗)

相手に関係なく自分たちのやり方をする方がリカさんっぽくない

浦和レッズは8日にリーグ戦の31試合目、サガン鳥栖戦に2-1で勝利した。このゲームでは割とシンプルに前線へとボールを送り込んだことがクローズアップされた。試合後にミックスゾーンなど多くの記者が集まる中では、要点では「これをやるのにリカルド・ロドリゲス監督である意味があるか」というニュアンスの声も聞かれたけども、むしろ私は逆だと思っている。どこのチームが相手でも自分たちが不変であり、相手がパーを出しても殴り倒せるグーを作るようなチームにしたいのなら、それこそリカさんである必要がない。相手がパーを出すならチョキを出すチーム、その選択肢を作っておけるチームにすることがリカさんに任せることの本質であると思うので、このゲームの勝ち方は「本来のリカさんらしい」という受け取り方をしている。

スタメンはトレーニングが公開された4日の紅白戦の1本目と全く同じメンバーだった。とはいえ、サンフレッチェ広島戦の厳しい結果やまずいプレーもあった後なので、例えばGKの西川周作は「今日ダメなら次のチャンスはもうないと思っていた」と話していたし、それなり以上のプレッシャーを感じながらやっていた選手も少なからずいたようだ。そして、ブライアン・リンセンとキャスパー・ユンカーが前線に並ぶ2トップ型を採用し、途中交代で松尾佑介とユンカーが並ぶ時間帯もあった。最近は明本考浩を前線に置く回数が少なくなっていたので、リンセンの存在は裏抜けや球際の技術で勝負できる選手ではなく、「前に戦える選手を置く」を久々に見た感もある。

2トップは「おっ」という感じがあったかもしれないが、他のところはあまりメンバーが変わっていない。特にボランチがかなり不動ではあるものの、リカさんにとって岩尾憲と伊藤敦樹が飛び抜けて良いからこの起用になっているのか、他の選手たちを起用に足らないと判断しているからこうなっているのかは分かりづらい。これをストレートに質問したところでプロの監督からまともな答えは返ってこないので、いずれにしても評価に差はあるのだろう。トレーニングを見て明らかにこのボランチを使うべきだという凄いパフォーマンスの選手がいたかと聞かれるとそうではないが、シーズン終了後の編成で少し見えてくる部分なのかもしれない。シンプルにボールを前に置こうと思ったら相手が下がってしまった時に、交代を使わないとどうにもならない状況を避けたかったのかもしれないが。

鳥栖の変な場所から先制点が生まれたことと、掛かった時間

このゲームでは鳥栖のシステムが割と不思議な感じで、表記がどうなっているかは全く知らないけれどもアッパースタンドにある記者席からはJリーグが始まる前くらいの時期に出版されたようなサッカーの本で読んだような「WMシステム」みたいな感じに見えた。3バックの前にダブルボランチがいて、インサイドハーフも2枚いて、3トップがいるというような。ダブルボランチが最終ラインを出入りしながらボールを前に進めて、3トップがワイドに幅を取りながら間にインサイドハーフが入ってくるようなニュアンスがあった。本来なら鳥栖は浦和がここまでの2カ月くらいと同様に、4-3-3変化をする想定で組み立てていたのだろう。その場合は広島戦と同様で、鳥栖はバランスを壊すことなくマークの担当がハッキリする。

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