浦レポ by 浦和フットボール通信

選択はニュートラル 相手を見る部分と積み上げてきたものの融合【轡田哲朗レッズレビュー/J第23節川崎戦】

(Report by 轡田哲朗)

コロナの影響は長い目で見れば大体トントンになるだろう

浦和レッズは7月30日のJ1第23節で川崎フロンターレに3-1で勝利した。川崎には今年の富士フイルムスーパーカップで勝利していて、去年のルヴァン杯準々決勝でも2戦合計で勝利しているけれども、リーグ戦では約4年ぶりの勝利だった。浦和はミハイロ・ペトロヴィッチさん、川崎は風間八宏さんが率いた10年前くらいから攻撃的なサッカーをぶつけ合う関係になっていたが、浦和はその後に強化方針やチームのやり方が散らかって、ようやく整理がつき始めて今に至る。一方で、川崎はマイナーチェンジしつつも継続性を持ってここ5年間くらいの成績はすさまじい。その観点からも4年くらい勝っていなかったのは自然なことのように思えてくる。

プレビューでも触れたように、このゲームはリカルド・ロドリゲス監督がここ1カ月強の良い流れを尊重した形でゲームに入るのか、それとも相手の良さを消すことにより主眼を置いて立ち位置やシステムをいじってくるのかを注目していた。結論から言うと、リカさんは試合後に「今までやってきた連携、つなぎ、崩しのところは継続してやってきました。今日の試合でいうと、何か変えてやるというよりは今しっかりとやれていることを継続して、そこに安定性をもたせることでやりました」と話した。ラスト10分の5-4-1はかなり危なっかしかったが、それは別にして「何を得て、何を諦めるか」のトレードオフの部分では攻撃より、ここ数試合で見せられているものを失わない方向に選択がされていた。

この試合では川崎のチーム内に新型コロナウイルスに陽性反応を示した選手が複数いて、ベンチメンバーが5人だった上にそのうち3人がGKという事態にはなっていた。ただ、「ああだったら、こうだった」みたいなことは簡単に言えるものではない。それこそ2020年から続くこの状況の中では多かれ少なかれどのチームも影響を受けるし、その時に対戦相手になることもある。今季で言えば浦和は開幕戦の時に二種登録の選手までベンチに入れる状況で、必要なポジションに必要な選手もいない試合になって京都サンガFCに敗れたけれども、思い返したとしても「大変な試合だったね」と振り返る以上でも以下でもないし、それは川崎にとってのこの浦和戦も同じだろう。細かく損得を比較する意味もないし、こんなものは長い目で見れば大体トントンになっていくものだから、この要素については基本的にはあまり考えない。

積み上げとスカウティングの両面が現れた2点目の前進

浦和はこのゲームでビルドアップの時に3バック変化するのではなくて、4-3-3に近い変化をすることで攻撃を組み立てた。岩尾憲がアンカーのように振る舞って、伊藤敦樹は右のインサイドハーフ化する。左側は多くの場合で江坂任が降りてきたが、時に松尾佑介や関根貴大がそこで受けることもある。静的なポジションで言うと、川崎の4-3-3の中盤で中央に入るジョアン・シミッチの横で、「アンカーの脇」というよく聞く呪文を取りに行ったように見える。

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