浦レポ by 浦和フットボール通信

声出し応援に関する運営責任で浦和レッズに過去最高額の2000万円の罰金が科されられる

公益社団法人日本プロサッカーリーグ野々村芳和チェアマンは下記の件について裁定委員会に諮問し、浦和レッズに対し下記のとおり懲罰を決定した。併せて浦和レッズに対し同種事案の再発防止を期すために必要な措置の実施を依頼したと発表した。浦和レッズへの懲罰は、けん責と、罰金2000万円となる。2000万円の罰金は過去最高額となる。

浦和レッズも今回の懲罰を受け、代表取締役社長は役員報酬の15%を、取締役副社長は同報酬の10%を、夫々3か月間自主返納。また、本事案に関する浦和レッズ内の処分につきましては、社内規定に従って検討するとした。また下記の再発防止策を実行し、試合運営に努めるとした。

【再発防止策】
(1)事前周知
・「Jリーグ新型コロナウイルス感染症対応ガイドライン」の周知徹底
・オフィシャルサイトやSNS等を通じた啓発情報発信の継続実施
・サポーターグループとの直接的なコミュニケーションの実施
(2)試合当日
・オフィシャルサイトやSNS等を通じた啓発情報発信の継続実施
・ホームゲーム時のスタジアムオーロラビジョンでの啓発情報発信の強化
・違反行為への適時適切且つ毅然とした対応(即時退場を含む)

野々村チェアマンは理事会後の会見で「その後 1週間、2週間と、僕も浦和の立花社長とも色々話をしたり、会ってコミュニケーション取ったりしてますし、現場同士もどうやったらより良くできるか、リーグはリーグができること、クラブがこうしたいことっていうのを色々すり合わせをしたりしています。 Jリーグがただペナルティを科して終わりということではないし、それではいけないと思うので この数週間でコミュニケーション取ったことをより良くできる、より良いサッカー界にするために一緒にJリーグとしては伴走していこうという思いで進んできているので、一つの案件ではあったと思いますけど、その後のクラブとリーグとの 取り組みはすごく前向きな取り組みができていると思います。なのでそこは継続していきながら、次はもっと明るいサッカー界にできるように、クラブとリーグで取り組んでいきたいなと思っています」とコメントした。

懲罰決定について

1.対象事案

事案1

(1) 懲罰の対象となる浦和レッズの違反行為

ホームクラブとしてサポーターが以下(2)に記載する秩序を損なう行為を行うことを防止することも、制止することもできず、Jリーグ規約 (以下、規約)第51条 [Jクラブの責任)に示す「観客にホームスタジアムおよびその周辺において秩序ある適切な態度を保持させる義務」に明らかに違反した。

(2) 浦和レッズサポーターによる秩序を損なう行為

2022年5月21日、埼玉スタジアム2002において開催された2022明治安田生命J1リーグ第14節 浦和レッズvs鹿島アントラーズの試合開始前である午後3時30分頃、スタジアム北車両門付近において、浦和レッズサポーターが以下の行為を行った。

①Jリーグ新型コロナウィルス対策ガイドライン(以下 「ガイドライン」という。)において「声を出す応援」は禁止されているにもかかわらず、複数名 (少なくとも60名)が、浦和レッズチームバスの到着の前後に、約10分間、集団で声を出して応援を行った。

②ガイドラインで「マスクを着用する」ことが求められているにもかかわらず、上記①に際し、一部の浦和レッズサポーターがマスクを着用しなかった (マスクを顎付近にずらして着用する等、口元をマスクで覆っていない行為を含む)。

事案2

(1)懲罰の対象となる浦和レッズの違反行為

ビジタークラブとしてサポーターが以下(2)に記載する秩序を損なう行為を行うことを防止することも制止することもできず、サポーターにJリーグ規約 (以下、規約)第51条[Jクラブの責任)に示す「試合の前後および試合中において、ビジタークラブのサポーターに秩序ある適切な態度を保持させる義務」に明らかに違反した。

(2)浦和レッズサポーターによる秩序を損なう行為
2022年7月2日、パナソニックスタジアム吹田において開催された2022明治安田生命J1リーグ第19節ガンバ大阪vs浦和レッズの試合終了間際である90+2分頃、同スタジアムのゴール裏ビジター席上層階において、浦和レッズサポーターは以下の行為を行った。

①ガイドラインにより「声を出す応援」が禁止されているにもかかわらず、複数名 (少なくとも100名)が、約5分間、集団で声を出して応援を行った。

②ガイドラインで 「マスクを着用する」ことが求められているにもかかわらず、上記①に際し、一部の者はマスクを着用しなかった (マスクを顎付近にずらして着用する等、口元をマスクで覆っていない行為を含む)。

2.懲罰内容

・けん責

・罰金2,000万円

3.懲罰量定に際し参考とした事情

浦和レッズは、2020年10月31日開催の対大分トリニータ戦における同種事案により、2021年2月22日に罰金300万円及び講責処分の懲罰を科されたのにも関わらず、短期間の間に本件各違反を繰り返した。

また、2022年5月13日開催の対サンフレッチェ広島戦及び同月18日開催の対横浜F・マリノス戦において、サポーターから提出された「フットボールに情熱を戻す決断は誰の責務?PRIDEを奪われたサポーターを無視して忖度を続けた結果、失ったものは何?」という横断幕掲出申請を承認するに当たり、サポーターが声出し応援の禁止等の規制に強い不満を抱いており、ガイドラインに違反して声出し応援等を行うおそれがあることが十分予見できた。それにもかかわらず、サポーターに対する十分な啓発や声出し応援を制止するための体制整備を行った形跡がおよそみられなかった。

さらには、事案1の後、Jリーグからの再三の求めにもかかわらず、サポーター等に向けた対外的なステートメントも発出せず、かつ、声出し応援等を行ったサポーターに対する制裁処分の発動、声出し応援を制止するための体制整備等、同種事案の再発を防止するのに有効と考えられる対応も何らとらないまま、事案2に至った。事案1、事案2の各行為は、スポーツ庁をはじめとする政府当局からも指摘を受けるなど、社会的影響も大きく、Jリーグの信用を毀損し、声出し応援の段階的な再開を含む、Jリーグの試合の正常化に向けた取り組みを阻害しかねない。

なお、浦和レッズは、事案2の発生を経て、ホームページ上に「違反行為への適時適切旦つ毅然とした対応 (即時退場を含む)」を含む再発防止策等に言及するステートメントを発出している。

4.適用条項

事案1

規約第133条第1号

JFA懲罰規程第4条〔懲罰の種類〕第2項

JFA懲罰規程第27条〔競技及び競技会に関する懲罰基準)

JFA懲罰規程別紙1〔競技及び競技会に関する懲罰基準〕3-7〔チーム又は選手等によるその他の違反行為〕

規約第51条 〔1クラブの責任〕第1項第2号

事案2

規約第133条第1号

JFA懲罰規程第4条〔懲罰の種類〕第2項

JFA懲罰規程第27条〔競技及び競技会に関する懲罰基準〕

JFA懲罰規程別紙1〔競技及び競技会に関する懲罰基準〕3-7〔チーム又は選手等によるその他の違反行為〕

規約第51条 [Jクラブの責任〕第2項第2号

5.付言

浦和レッズに対するサポーターの行為に起因する懲罰事案は、複数回に及んでおり看過できないものとなっている。集団で声を出して応援することはサポーターによる応援の本質的事項に関わるものであり、声出し応援の禁止等のガイドライン遵守をはじめとする秩序維持にはサポーターの強い自律が必要であって、クラブには、これを促すための不断の改善努力が求められる。短期間のうちに少なくとも複数回にわたり秩序を損なう行為を阻止できなかったことは重く受け止めざるを得ない。かかる状況はJリーグ全体への社会的信用の低下につながるものであることを再認識するよう要請するとともに、今後Jリーグも浦和レッズと共に再発防止に向けて対応するものの、浦和レッズが再びサポーターの行為に起因する懲罰事案を発生させた場合、無観客試合の開催又は勝点減といった懲罰を諮問する可能性があることを付言しておく。

(参考)

Jリーグ規約
https://aboutj.jleague.jp/corporate/wp-content/themes/j_corp/assets/pdf/02_20220228.pdf

JFA懲罰規程
https://www.jfa.jp/documents/pdf/basic/br26.pdf

Jリーグ新型コロナウィルス感染症対応ガイドライン
https://www.jleague.jp/img/pdf/2022_0719_1.pdf

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