旅猫by浦研プラス&欧研プラス

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ヨーロッパ移住への道!15『テクニシャンが来た! けど…』

 ドイツの住居にインターネット環境を構築しようとして、インターネットプロバイダー『UnityMedia』の店舗へ行って開設の手続きをしました。『UnityMedia』はTVのケーブル配線を使用してネットを繋ぐらしいので回線速度が速いとのこと。これは楽しみ。ただ、住居に回線を繋ぐためには『テクニシャン(ドイツ語でTechniker。技師、技術者の意味です)』に住居に来てもらわなくてはなりません。日本でも光回線を契約するときなどはNTTの人が来て回線開設の作業をしますよね。この点はドイツも同じです。
 心配だったのは、『UnityMedia』の店員のあんちゃんが、開設予定日に関して『事前に君の携帯電話へSMSが送られてくる』と言っていたこと。そのSMS、ドイツ語だったらどうしよう……。 
 後日送られてきたSMS、ドイツ語でした。文面はこんな感じ。
『Terminbestätigung im Auftrag von Unitymedia. Der Techniker kommt an dem folgenden Tag im angezeigten Zeitfenster zu Ihnen: X.X.2018 X:00 - X:00』
 直訳すると、『テクニシャンは、この日に、あんたの家に行くよ』。約1か月後。この日を逃せば、また1か月待たきゃならないかもしれない。そもそも日程を変更するには『UnityMedia』に直接電話しなきゃならないらしく、オペレーターがドイツ語オンリーだったら要件を伝えられないかも……。うん、もう仕方がないので、この日は予定を入れずに待とうと決断しました。
 しかし! なんと予定日の3日前に某選手のインタビュー取材が急遽入ってしまい、テクニシャンが来る日は家に待機できなくなりました。どうしよう……。ドタキャンで連絡もしなかったら、テクニシャンが怒るかなぁ……。そもそも、その後の処理が大変になりそうなので、ここは意を決して『UnityMedia』の本部に電話して日程を変更してもらうしかない。よし、電話しよう!

僕「あー、もしもし?」
オペレーターのおばさん(みたいな声)「グーテンターク」
僕「あなたのテクニシャンが僕の家に来る日なんですけども、急遽予定が入ってしまったので、日程を変更したいのですが(英語で)」
オペレーターのおばさん「うーん、ちょっと、あなた、なに言っているかわからないけど、インターネット開設の日を変更したいのね。いいわよ」
 やった! 英語でもなんとか通じそうです。
僕「はい、はい。日程を変えてほしいんです。で、違う日にするとなると、今度はいつになりますか?」
オペレーターのおばさん「うーんと、チョット待ってね。ああ、2週間後ならテクニシャンの予定が空いてるわ。それでいい?」
僕「えっ! 2週間後! ああ……、はい……、それでいいです……。異存ありません……」
 なんと、インターネット開設の日が2週間も延びてしまいました。つまり『UnityMedia』の店舗で回線開設の手続きをしてから約1か月半後です。いやー、道のりは長い。でも、仕方がない。今回は僕がスケジュールを変えてしまいましたからね。
 それから2週間後。ついに、その日がやってまいりました。リビングの椅子に座って、いつ玄関のベルが鳴るのかと耳を澄ませています。
「ジー(ベルの音」
 来た! 早くインターフォンに出ないとテクニシャンが帰っちゃうかも。
僕「はい! はい! 僕、居ます!」
テクニシャン(と思わしき人)「あー、XXXXXXで、XXXXXXだから、XXX」
 えっ……、ドイツ語が超早口過ぎて全然分からない……。そもそもあなた、テクニシャンなの? これはもう、4階から玄関まで降りてって直接確かめるしかない。階段を転げ降りるように下って玄関を開けると、恰幅の良いあんちゃんが何かの機材を小脇に抱えて立っています。間違いない! あなた、テクニシャンでしょ?
恰幅の良いあんちゃん「『UnityMedia』の使いで来たよ(と、言っている様子)。とりあえず、家に上がらせて。回線の確認するから(と、言っている様子)」
僕「はい、はい。お安いご用ですよ。こちらへどうぞ、どうぞ」
 テクニシャンがズカズカと家に上がり込んで、何やら周囲を見渡しています。そして壁に備え付けているジャックを見つけると、いきなりドライバーを持ち出して中身を見ようと開け出しました。大丈夫なの?
恰幅の良いテクニシャン「ああ、これはXXXXXだな。だからXXXXXだ。ああ、もう! XXXXX、XXXXXXXXXXXXなんだよ!」
 えっ……、なにやら重大な問題が発生した様子。
僕「ど、どうされました?」
テクニシャン「XXXXXXXXXXXXXXXXXX」
 早口なうえにパニックってるのか、そもそもドイツ語だからさっぱり分かりません。あんちゃん、いきなり部屋を出て廊下を確認し、地下まで降りていきました。ちなみにドイツ語で地下室のことを『Keller』と言います。よく地下にあるワインバーなどのことを『ワインケラー』なんて言うでしょ。その『ケラー』です。
テクニシャン「XXXXXXXXXXXXXXXXXX、だから、駄目だな」
 なんとなく、『駄目だな』という単語だけ分かりました。何が駄目なの? いや、待ってくださいよ。こっちは1か月半も待ったんですよ。ここで帰られちゃったら、また手続きをやり直すの? そもそも何が駄目だか分からないので、こちらは困惑するばかり。でもテクニシャンのあんちゃんからしても迷惑な話で、『なんでコイツ、ドイツ語が分かんないの?』って顔で威圧してきます。
 ヤバイ。この窮地をどう乗り切るか……。そうだ! ドイツ語が堪能な知り合いに電話して代わりにテクニシャンと話してもらおう。不動産屋さんのOさんは日本に一時帰国中だから、同僚の麗しき女性Lさんに連絡しよう……、って、Lさん、電話に出ない! じゃあ、もうひとり、ドイツ在住歴の長いYさんに連絡……って、出た〜。『Yさん、助けて〜』。

Yさん「はいはい、じゃあ、そのあんちゃんと電話代わってくださいね」
テクニシャン「XXXXXXXXXXXXXXXXXX。ホイ、電話代わるわ」
 あんちゃんから電話を渡されました。

Yさん「うーん、どうやら、島崎さんの住居は大変古い建物らしくて、『UnityMedia』のケーブル回線が部屋まで届いていないらしいんです。で、もし回線を繋げるとなると住居の大家さんに連絡して、住居の壁に穴を開けて(!)、道路のケーブル配線を引っ張って部屋まで繋げなきゃならないらしいんです。大家さんがそれを承諾するか分からないですし、そもそも道路から部屋まで引くケーブルの代金が幾ら掛かるかも分からないみたいで、とにかく大工事が必要で『俺には手に負えない』と言ってます」
 なんと! 大ごとになってます。住居の壁に穴を開ける? ケーブルを外から引っ張り込む? そこまでしないとドイツの住居にインターネットを繋げないの?
Yさん「いやいや、そうじゃないんです。普通は電話回線の『DSL』という配線を使用してインターネットを繋げるんです。電話回線は各住居に必ず繋がっているはずなので、そんな大掛かりな工事は必要ないんですが、『UnityMedia』が使用しているケーブル配線は話が別でして、新しい住居の場合は建築の際に最初から通してあることが多いんですが、100年ものなどの古い住居の場合は新たに配線をしないといけないこともあるんですよね。島崎さんのところはまさにそのケースで、今回の場合は『UnityMedia』のケーブル回線を繋げるのはなかなかハードルが高そうですねぇ」
 ガーン。そんなこと、知りませんでした。テクニシャンのあんちゃんに『承知致しました』と言うと、肩をすくめたあんちゃんが何やら住居や廊下、地下室などの写真を撮り始めました。Yさんに聞くと、「島崎さんはもう『UnityMedia』との契約をしてしまったんですけども、住居がケーブル配線を繋げない環境であることを証明できれば、その契約を無償で破棄できる」とのことで、そのためにあんちゃんが丁寧に撮影してくれてるんですって。こういうところ、何だか優しい。最後は笑顔で手を振ってあんちゃんが帰っていったんですが、僕はというと、どっと疲れて部屋のソファに倒れ込み、『家にインターネットを繋げるのは無理なのかなぁ』と悲嘆に暮れたのでした。
 このインターネットの話、まだ続きます。