旅猫by浦研プラス&欧研プラス

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ヨーロッパ移住への道!⑨ 『大家さんとの面談』

 フランクフルト中央駅から地下鉄でふたつ目。瀟洒なレストランやショップが連なる商店街の脇道から約100メートルのところにある4階建てのアパートメント。1階あたり2部屋しかないので、地下階を含めると12部屋くらいの小規模な集合住宅。アパートメントを出ると新緑豊かな公園と教会が建っていて、そこを抜けて僅か1分でドイツ鉄道・Sバーンの駅に着きます。不動産会社に務める知り合い曰く、「こんな物件、めったにないですよ!」とのことで、速攻で大家さんに連絡して面談の段取りをしました。
 ドイツでは貸主が借り主と面談した上で入居の可否を連絡します。好物件ともなると入居希望者が殺到し、その競争率も跳ね上がります。話によると、今回の物件は僕の他にも面談予定者がいるようで即決とはいかない様子。しかも実際に物件の前に立ったときは「思った以上に好条件かも?」と思うほどで、不動産会社の知り合いの男性と女性、そして僕の3人は「あまり期待するの止めましょうね。面談の上で入居不可だったら余計にがっかりしてしまうから」と言い合っていたくらいでした。
 おそるおそるアパートメントの呼び鈴を押しました。表札には大家さんの名前が書いてありましたが、発音が難しそうで読めません。玄関のドアがバッと開くと、初老の御婦人が顔を出して、超早口のドイツ語で何かをまくし立てています。「うぉっ! いきなり、何言ってるか分からない……」。でも、僕には頼もしい友人たちがいます。
 特に知り合いの女性は生粋の日本人のにドイツ語がペラペラなんです。初めてお会いしてビールを飲みに行ったとき、僕は毎度お馴染みの一本調子で「ピルスナービールをください」と言うだけなのですが、彼女ときたら、流暢なドイツ語で「うーんとね、ライム入りビールある? この前、●●で飲んだときに美味しかったのよね? あら、ないの? だったらレモン入りのやつでいいわ。どっちも美味しいですもんね」と言い、いきなり店員さんと手を取り合ってカンバセーションしてました。スゲー。頼もしい。一生、あなたに付いていきます! もう、ひれ伏して弟子入りしたいくらいでした。
 さて、ドイツ人大家さん、僕、友人の男性のふたりを見定めた後、小柄な友人女性を見つけると満面の笑み。どうやら彼女が入居希望者だと思ったらしく、速射砲のようにドイツ語で畳み掛けます。
「まあ、よく来たわね。さあ、さあ、中に入って! あら、玄関の立て付けが悪いわね。ちゃんと閉まらないこともあるのよ。やーねー。今度、工事してもらうわね。少しだけ我慢してね。そうそう、そうやって、ちゃんとドアが閉まるまで引っ張るのよ。そう! 上手いわね、あなた。いやー、良かったわ、あなたのような可愛い子が来てくれるなんて。今日は寒いでしょう? それでね……」
 まずい。入居希望者は僕です。彼女ではありません。しかも僕は彼女のようにドイツ語が堪能ではありません。もし入居が許されても、婦人の話し相手にはなれそうにありません。項垂れるように佇んでいると、どうやら友人の彼女が「入居者は私ではなく、彼です」と言ってくれたようです。
「えっ、そうなの? まあ、まあ。それは失礼したわぁ。あなただったのね。日本人っていいわよねー、いつもニコニコ笑っていて、穏やかな子が多いわよねー。私なんて、機嫌が悪い時はしかめっ面になっちゃうわよ。機嫌が悪いのに笑顔でいるなんて無理でしょ? あなたも、そう思わない?」
 『そうですよねぇ』と言いながら、典型的な日本人である僕は、なぜか愛想を振りまいて笑顔を浮かべています。この、面談、いったい、どうなるんでしょう? 少し長くなってしまいました。前回から引き続き、この面談結果は次回以降に!