【島崎英純】2024Jリーグ第30節/ガンバ大阪vs浦和レッズ・試合レビュー『質実剛健なスコルジャ式。ウノゼロで”再初陣”を勝利で飾る』

©Yuichiro Okinaga

意外だった戦術変化

マチェイ・スコルジャ監督はペア=マティアス・ヘグモ監督前体制下でここ数戦スターティングメンバーに名を連ねていた選手を中心にチームを編成した。GKは西川周作、バックラインは右から石原広教、井上黎生人、マリウス・ホイブラーテン、大畑歩夢のセット。ダブルボランチは安居海渡と、前節のFC町田ゼルビア戦では不出場に終わったサミュエル・グスタフソンが満を持して先発した。また2列目は右に大久保智明、トップ下に渡邊凌磨、左に関根貴大という重厚なユニットで、最前線にはブライアン・リンセンが立った。

浦和は試合開始直後からスコルジャ監督の志向するチームスタイルのエッセンスを如実に示した。まずはホームのガンバ大阪にボールを譲りつつ、自陣で秩序的な4-4-2ディフェンスブロックを築き上げた。今節の先発メンバーの内、昨季のスコルジャ監督体制下でプレーしたのは西川、ホイブラーテン、大畑、安居、大久保、関根、リンセンと実に7人に及ぶ。彼らはスコルジャ監督が課すディフェンスワークを熟知している選手たちで、その経験値を武器に約8か月ぶりにも関わらず新指揮官が求めるチームスタイルを遵守していた。

各ポジションの役割も明確だった。4−4の2ラインの前にリンセンと渡邊が立ち、彼らがファーストプレスとプレスバックに勤しむ。2ラインは自陣の横幅を十全に埋めるゾーンディフェンスを実行し、自陣最奥のディフェンシブサードではハーフレーンをダブルボランチが見る形で隙間を埋めていた。これぞまさしく『スコルジャ流』の強固なディフェンス組織であり、今節のメンバーはそのタスクを全うし続けた。

浦和は攻撃面でも共通理解が得られていた。GKの西川は無闇に自陣からショートパスを選択せず、まずは最前線のリンセンの動き出しを観察してそこへフィードを打ち込む挙動を繰り返した。センターバックの井上とホイブラーテンも同様で、ボランチの安居までもが1トップのフリーランニングに呼応する構えを見せていた。唯一グスタフソンだけはショートパスコンビネーションを仕掛けたが、これによって自陣に引き籠もったままボールを前進させられない窮地から逃れることができたのは興味深い。グスタフソンのプレーバリエーションは昨季の浦和になかった武器であるため、今後も彼の意外性を攻撃面の促進へと繋げられそうな期待感を醸していた。

【2024Jリーグ第30節/ガンバ大阪vs浦和レッズ・スターティングメンバー】

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