【島崎英純】2024Jリーグ第21節/浦和レッズvsジュビロ磐田・試合レビュー『逆境の中で、新時代の到来を告げる圧勝劇』

©Yuichiro Okinaga

決断されたシステム変更

浦和レッズのスターティングメンバーは前節の名古屋グランパス戦と同じ。というよりも、負傷者の続出や酒井宏樹、アレクサンダー・ショルツ、岩尾憲の移籍というアラート状況ではメンバーを変更できない事情が色濃く醸される布陣となった。

チームの窮状はベンチ入りメンバーを見渡しても分かる。枯渇するサイドバックを補填する形として宇賀神友弥が今季初めて公式戦でメンバー入り。ショルツがチームを離れたことで必然的に井上黎生人がセンターバックのバックアップに名を連ねた。またウイングプレーヤーが軒並み戦線離脱してしまったことでエカニット・パンヤがチャンスを得られ、岩尾憲の離脱で堀内陽太が控えに入り、唯一人材が揃っている1トップはブライアン・リンセンが先発する中でチアゴ・サンタナと興梠慎三がベンチで臨戦態勢を取った。

アウェーのジュビロ磐田が4-4-2のディフェンスブロックを築く中、浦和は丁寧で効果的なビルドアップを繰り返した。磐田は2トップのジャーメイン良とマテウス・ペイショットが浦和センターバックのマリウス・ホイブラーテンと佐藤瑶大にアプローチし、背中で浦和ダブルボランチの安居海渡と伊藤敦樹にフィルターを掛ける構えを取った。しかし、この日の浦和は4-2-3-1の効能を存分に活用していて、伊藤と安居が巧みにパスアングルを付けるポジション修正を繰り返しながら味方からの縦パスを何度もレシーブした。磐田としては安居か伊藤のどちらかがバックラインへ落ちることで相手を後傾にさせたかっただろうが、浦和のダブルボランチは消極的な後方降りを選択せずにミドルゾーンで果敢に勝負を仕掛け、その結果試合を完全に掌握した。

かけ離れるボールポゼッション率を認知した磐田は前半途中からダブルボランチのレオ・ゴメスと上原力也が前方へ打って出て安居や伊東へプレッシャーを掛けるようになった。ただ浦和側もその動向をしっかり観察していて、今度は相手バックラインとミドルラインの間に生まれるライン間のスペースに武田英寿や渡邊凌磨が入り込むことによってビルドアップの位置を一層前傾にし、ワンサイドゲームの様相を深めていった。

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