【島崎英純】2023Jリーグ第33節/浦和レッズvsアビスパ福岡・試合レビュー『諸刃の剣だった好戦的な姿勢。痛恨の逆転で今季リーグ・ホーム最終戦を飾れず』

©Yuichiro Okinaga

好スタート

試合の入りは非常に良かったと思う。最序盤こそアビスパ福岡がインテンシティの高いプレーで浦和レッズを圧迫したが、それでも臆すること無くベクトルを前へ向けられていたし、攻守転換のスピードも速かった。

チーム全体を腰高にさせる姿勢はダブルボランチの挙動に明確に表れていた。岩尾憲の出場停止、伊藤敦樹の怪我による欠場で今節、ダブルボランチを組んだのは安居海渡と柴戸海だったが、ふたりはバックラインに降りずに中盤中央に定位し、ゲームをコントロールしようとしていた。福岡は1トップの山岸祐也がファーストプレス役となって浦和のボールホルダーにプレッシャーを掛ける形なので、これに対してはセンターバックのアレクサンダー・ショルツとマリウス・ホイブラーテンの2枚で対応すればいい。また相手サイドアタッカーの前嶋洋太と湯澤聖人には関根貴大と明本考浩の両サイドバックが高いポジションを取ることで後退の余地を与えられる。マチェイ・スコルジャ監督は負傷明けの関根を右サイドバックに抜擢し、明本を定位置の左に置いたが、このふたりが好戦的な姿勢を醸すことで相手サイドアタッカーを無闇に出張らせない目論見があったのではないか。

そもそもボランチの『後方降り』は味方CBの立ち位置を横方向へストレッチさせることで疑似サイドバック化させ、その流れで味方SBが前方へ押し出される戦術メカニズムが基になっている。しかし、そのようなシステムを発動しなくても、明本と関根ならば果敢に敵陣へ打って出てくれる。ならばボランチが後ろへ下がる意味も無くなり、厳しい局面バトルが予測されるミドルゾーンでダブルボランチが堂々と勝負したほうがいい。その意味において、前半の浦和は柴戸と安居のダブルボランチが期待通りに中盤に定位し、相手シャドーの紺野和也&金森健志のプレーエリアを限定し、かつ相手ボランチの前寛之と井手口陽介の前進を食い止められていた。

【2023Jリーグ第33節/浦和レッズvsアビスパ福岡・スターティングメンバー】

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