【島崎英純】2023AFCチャンピオンズリーグ・グループステージ第1節/武漢三鎮vs浦和レッズ・試合レビュー『試合をコントロールするも失点。それでもタフに、強かに追いつき勝ち点1奪取』

©Yuichiro Okinaga

熟慮された布陣

浦和レッズは過密日程の中でリーグ、YBCルヴァンカップ、そしてAFCチャンピオンズリーグ(以下、ACL)の各大会を戦わなければならない状況にある。

Jリーグ第27節の京都サンガ戦からは中4日、そして今回のACLグループステージ第1節の武漢三鎮戦からJリーグ第28節のガンバ大阪戦までは中3日。武漢戦は中国でのアウェー戦で、G大阪戦も大阪・吹田でのアウェー戦と、浦和は移動の負担も強いられる。マチェイ・スコルジャ監督は当然複合的な要素を加味したうえでチーム編成を施しているはずで、今回の武漢戦は京都戦から5人のスターティングメンバーを変更した。

注目すべきはサイドエリアの人選だ。右には荻原拓也と髙橋利樹が縦に並び、左には大畑歩夢と小泉佳穂が配された。これはかなりイレギュラーな組み合わせであり、各選手との相性、コンビネーション精度、攻守バランスなどを観察する必要があった。

右サイドに関しては一定程度攻撃が機能したように思う。これはダブルボランチの一角である伊藤敦樹が右インサイドハーフ的にプレーする影響もあって、ボールサイドで何度もトライアングルポジションを生んでボールを前へ運ぶことができた。ただし荻原が左利きのため、サイドを深く抉った際にライン際に立つのが髙橋になる傾向が強く、その影響も相まって効果的なクロスが中々上がらなかった。インサイドに入った荻原がハーフレーンに侵入してカットイン気味に左足シュートを撃ち込めればそれなりの好機も築けたかと思うが、それも無し。こうなると相手GKリウ・ディエンズオを強襲するには至らず、敵陣奥深くまで入れた割には絶好機を築くことができなかった。

一方の左サイドは明確にノックダウン状態に陥った。大畑の身体の向きが定まらず、前方スペースへ入り込む小泉とのコンビネーションが発動しない。また、ダブルボランチの一角である岩尾憲がアンカー役を務めるためにフォロー役のMFが不在で、右サイドとは異なりトライアングルポジションを築けなかった。

右サイドの攻撃停滞に関しては本サイトで度々解決策を提示してきた。右の伊藤と同じメカニズムでサイドエリアをフォローすべきポジションはずばりトップ下だ。守備時に4-4-2のディフェンスブロックを築くことはチームコンセプトとして確立されている中で、攻撃時は岩尾がアンカーに成り代わるため、システムは4-1-2-3にトランスフォームされるのが自然な流れだ。すなわち4バック、アンカー、ダブルインサイドハーフ、トップ下のユニット編成で、このダブルインサイドハーフを伊藤、そしてトップ下の安居海渡が務めるのが適任だと思うのだ。

しかし、実際の安居は左サイドエリアにはそれほど関与せず、また1トップのブライアン・リンセンとの距離も離して後方でパスレシーブする所作が目立った。これではバランスの良い攻撃を発動するのは難しくなるし、ましてや前傾姿勢でゲームをコントロールすることもできなくなる。

それでも浦和の試合の入りはそれほど悪くはなかった。最前線のリンセンが好戦的に相手ボールホルダーへ接近し、サイドMFも腰高なポジションを取り続けた。もちろんトップ下の安居も敵陣にボールがあるときは前から仕掛けていく。武漢はパスワークがそれほど秩序的ではなく、パスコースを確保する各選手のポジショニングも定まっていない印象を受けた。もとより武漢はシンプルに前線のアブドゥルアジズ・ヤクブやダビジソンへボールを配球して少ない手数で浦和ゴールへ迫りたい意思を醸し出していて、浦和が浴びせる前線プレスへの対応策は唯一、そのフィードパス供給に限られていたように思う。

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