”リカルド流”で鳥栖を攻略。公式戦6試合ぶりの勝利【島崎英純】2022Jリーグ第32節/浦和レッズvsサガン鳥栖・試合レビュー

©Takehiko Noguchi

対鳥栖戦略

浦和レッズのリカルド・ロドリゲス監督は実利を求めた。元々この指揮官は戦況によって柔軟に戦術・戦略を変遷させて勝利を追い求めるタイプだと認識している。それは徳島ヴォルティス時代のスタイルを観察すれば自ずと分かることだし、浦和を率いて昨季、そして今季終盤までチーム構築を進めてきた過程でもうかがい知ることができた。

 一方で、6月のシーズン一時中断期が明けてからの浦和は主力選手の固定化が進み、それに準じてポゼッションワークの向上と守備強度の高さが顕著になったことから、主体的にゲームを進める意欲が高まったように思える。特にピッチ上の選手たちは会心のゲームを続ける内に理想的な展開を常に模索するようになり、それが自陣からの丁寧なビルドアップ構築というチームスタイルへと昇華していったのではないか。

しかし、チーム全体のコンディション低下と対戦相手の苛烈な前線プレスワークに晒されてからの浦和はポゼッションワークの減退が見られた。その結果、YBCルヴァンカップ・プライムステージ準決勝第2戦のセレッソ大阪戦やJリーグ第31節のサンフレッチェ広島戦で大敗を喫し、チーム全体がジレンマに陥ったと思われる。

今一度、リカルド・ロドリゲス監督が掲げるチームスタイルの概念を認識すべきだ。『ポジショナルプレー』と称されるチームコンセプトはボールを保持することが目的ではなく、対戦相手の穴を突き、対戦相手のゴールを打ち破り、自陣ゴールを死守し、そして勝利という最終目的を果たすための手段に過ぎない。その概念下ではボールを繋ぐことも求められるし、素早いカウンターアクションで相手ゴールへ向かう挙動も要求される。その意味において、今回のJリーグ第32節・サガン鳥栖戦で浦和が用いた戦略は、現体制の理念と確実にマッチすると思っている。

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