現状の実力差を見せつけられ、大量失点で完敗【島崎英純】2022Jリーグ第31節/サンフレッチェ広島vs浦和レッズ・試合レビュー

©Takehiko Noguchi

サンフレッチェ広島の前線プレス&チェイスは執拗で強力だった。1トップのドウグラス・ヴィエイラ、ダブルインサイドハーフの満田誠と森島司、そしてダブルボランチの川村拓夢と野津田岳人が中央エリアを締め、ウイングバックの柏好文と茶島雄介も局面を狭めていく。広島は局面強度の高さが売りで、それに加えてボールサイドへの人数確保が徹底されているため、序盤の浦和はパスコースを見出すのに大変苦労した。

浦和は前戦のYBCルヴァンカップ・プライムステージ準決勝第2戦のセレッソ大阪とのゲームでも相手の積極的前線プレスに苦しんだ。特にアンカーの岩尾憲は狙い所とされていて、彼の周囲を何人もの敵が囲い込むことで浦和のビルドアップが無効化された。広島もそのスカウティングは済んでいたようで、岩尾のプレースペースを極力制限することに注力していた。

岩尾は相手のプレッシャーに晒されてもパスを通す技術を有しているが、さすがに360度包囲されてしまうと身動きが取れない。岩尾に敵が殺到すれば他の選手が自由を享受するのは道理だが、対戦相手からしてみれば、浦和の他の選手はビルドアップ起点として適切に機能しないと判断しているのだろう。その見立てはある意味正しく、広島は22分にGK西川周作と岩尾の最後尾でのパス交換の隙を狙って森島がボール奪取に成功し、まんまと先制点を奪ってしまった。

前半半ばまでの浦和はビルドアップ構築に苦悩した。しかし、この日のチーム編成では岩尾に代わるプレーメーカーが何人か存在した。それはトップ下の小泉佳穂と1トップの江坂任だ。ふたりは岩尾が敵に全包囲されているのを見て交互に自陣へ降りるアクションを施し、パスの中継地点を確保した。これが小泉、あるいは江坂のどちらか一人だったならば、それほど試合展開を変化させられなかったかもしれない。しかし、この日の浦和には場面転換に優れるビルドアッパーが岩尾、小泉、江坂と3人存在したことで、それなりにポゼッションに拘る態勢を整えることができた。

常に岩尾が自陣でコンダクターの任務に就かなくても良い。彼が激しくマークされるのならば、他の選手がその役目を引き継げばいいのだ。ただし、誰かが役割を変化させたら、他の選手が移り変わった役割を引き受ける連鎖が必要だ。現象面で論じれば、江坂が降りたら小泉が最前線へ出張る。小泉が降りたら岩尾が前方へ上がる。このポジション(役割)チェンジが新たなるダイナミズムを生む。

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