苦しい台所事情でも圧巻の出来。総合力を示して柏に快勝!【島崎英純】2022Jリーグ第29節/浦和レッズvs柏レイソル・試合レビュー

©Takehiko Noguchi

チーム力は安定したまま

浦和レッズは試合開始直後からゲームを完全に掌握した。柏レイソルの5-3-2ディフェンスブロックを次々と突き崩して幾つものチャンスを創出し、相手を混乱状態に陥れた。

浦和は先週から今週にかけて総計6人の選手が新型コロナウイルス感染症の陽性判定を受けた。その結果、前節の鹿島アントラーズ戦、そして今節の柏戦ともにベストメンバーを組めずに窮余策を採らざるを得なかった。しかし今回はバックアップと称される選手たちが自らの実力を存分に発揮し、リカルド・ロドリゲス監督が掲げる『ポジショナルプレー』の概念をしっかりと踏襲して個人能力、チーム戦術の両面で相手を凌駕した。

浦和側から見れば、柏のネルシーニョ監督が採用している3-3-2-2の中盤アンカーシステムはすでに対策済である。柏のアンカー・椎橋慧也の両脇スペースを突く。そもそもロドリゲス監督が用いる戦術スキームでは当該スペースに様々な選手が入り込む戦略が定められている。1トップの後方降り、トップ下のエリア移動、サイドMFのインサイドワークなどは最たる例で、それに加えてサイドバックのオーバーラップ&インナーラップ、そしてボランチ・伊藤敦樹のインサイドハーフ化によって、その効力は今季途中から格段に高まっている。

柏の前線守備の拙さも浦和がペースを握る要因になった。柏は2トップのドウグラスと細谷真大がファーストディフェンスの担い手となったが、これではGK鈴木彩艶、そして浦和センターバックのアレクサンダー・ショルツ&知念哲也で数的不利を築かれてしまう。また、柏はダブルインサイドハーフのマテウス・サヴィオとドッジのディフェンスワークが曖昧だった。本来ならば味方2トップと近接して4人で前線守備をして人数を合わせたかったのだろう。しかし、今の浦和はアンカーの岩尾憲が絶妙なポジショニングでパスコースを生んでしまうので、相手の4枚に対してGK、両CB、そして岩尾の計4人の数的同数でも鮮やかにビルドアップを貫徹してしまう。

また、浦和には先述した相手アンカーの脇を取るプレールーティーンが確立されている。その結果、マテウス・サヴィオとドッジは味方アンカーの両脇に生まれるスペースを埋めるべきか、あるいは前線守備に加わるべきかを逡巡して壊滅的にチームバランスを崩した。

(残り 3764文字/全文: 4817文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

1 2 3
« 次の記事
前の記事 »