【オフシーズン・移籍動向関連004】日々雑感−興梠慎三『必ず戻ることを信じて』

©Takehiko Noguchi

特異なストライカー

 鹿島アントラーズ時代の興梠慎三は2トップの一角を任されながらも、ブラジル人FWのマルキーニョスや後輩の大迫勇也をサポートする役回りに専念しているように見えた。浦和側から見たFW興梠はそれでも相当な脅威で、神出鬼没にエリアを闊歩する挙動や巧妙かつ狡猾なワンタッチプレー、そしてシャドーストライカー的なスペースへの飛び出しから何度かゴールを奪われた記憶がある。

 2013シーズン、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督体制2季目の浦和に興梠が完全移籍でやってきたとき、以前抱いていた彼のプレーイメージが実情と異なっていたことを知った。周囲を生かすコンビネーションに長ける点は揺るぎなかったが、それ以上に、ゴールを奪うための各種スキルがハイレベルだった。シュートレンジは本人も言及している通りペナルティエリア周辺で、パンチ力はそれほどない。しかしボールと相手ゴールの位置から逆算した身体の向き、相手DFのタイミングを外す振り足やその入射角度は独特で、守備側に防御のタイミングを与えず、かつ足を届かせられないコースへシュートを打ち込むセンスが抜群だった。

 興梠の身体能力の高さは対戦した数多のDFたちが証言している。見た目通り大柄ではないどころから筋肉質でもない。おそらく正面衝突する形でぶつかり合えば、大抵のシーンで興梠がDFにふっ飛ばされるだろう。しかし実際に興梠と対峙したDFは他の選手にはない彼特有の個性に敗北を喫してしまうのだ。

 かつて敵としても味方としても同じピッチに立ったことのある坪井慶介が興梠の凄さを語る。

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