日々雑感―武藤雄樹『究極のシャドー、究極のチームプレーヤーが浦和を去る』

©Takehiko Noguchi

ミシャの薫陶を受けて

 ミハイロ・ペトロヴィッチ監督体制4季目。チームが始動する直前に新加入会見が行われていた。壇上には11人の選手が並んでいる。レッズユースから昇格した斎藤翔太、茂木力也。期限付き移籍から復帰した岡本拓也、大谷幸輝、小島秀仁は後列に立ち、即戦力のズラタン、石原直樹、高木俊幸、橋本和、加賀健一、そして武藤雄樹は前列の椅子に座っていた。

 宮崎県宮崎市での一次キャンプ、鹿児島県指宿市での二次キャンプを経て、チームは順調にトレーニングを重ねてシーズン開幕を迎えたが、正直言って武藤のことはあまり印象に残らず、ベガルタ仙台に在籍していた彼がどんなプレーをしていたのかも思い出せなかった。今思うと大変失礼な話だが、聡明で快活な彼はのちに、当時の自身の知名度や周囲の評価についてこう話したことがある。

「そのような声は僕の元にも届いていましたよ(笑) 期待が大きくないことは分かっていました。浦和への移籍を決めた時は、仲の良い知り合いからも『浦和へ行って大丈夫?』と聞かれましたしね。でもね、僕の中では『このチャンスを逃したら、もう二度と日本一のチームでプレーすることはない』とも思ったんですよね。年齢を考えても、『行くのを止めて後悔するより、行ってから後悔したほうがいい』と思った」

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