日々雑感−興梠慎三『自由を謳歌するための凄み』
写真●片岡純/Jun KATAOKA
猫のような…
猫と居ると、(猫の)気分が良いときに遊びに付き合ってくれることがある。そんなときに追いかけっこをするのだが、こちらは必ず鬼役で、相手(猫)は逃げる側になる。
で、これがほとんど捕まえられない。こちらは相手の動きを予測して一歩先んじようとしているのに、大抵相手の挙動が上回ってしまう。まずは睨み合いになって、こちらはフェイント気味に身体を右へ傾けると同時に左へ飛ぶが、相手はその動きをあざ笑うかのように鮮やかに背後を取る。もちろん相手の動体視力は人間離れだし、初速のスピードも恐ろしく速い。だが、その前に、どうも相手はこちらの考えを読み切っているように思える。右へ動けば左、その逆も然り。こちらが前へ一歩出るとバックステップするし、悠然と構えると我関せずといった感であちらも身体を弛緩させる。結局勝負はいつだってこちらの敗北に終わり、徒労感がどっと押し寄せる。
サッカーは縦幅が90から120メートル、横幅が45から90メートルというフィールドの中で雌雄を決する競技だ。その勝敗は相手ゴールにどれだけボールを入れ、逆に自陣ゴールへボールを入れさせないかで決める。お互いのチームはその目的を果たすために知略と策謀を駆使するが、その内実は1チーム11人に定められた選手たちのプレーで決まる。
その観点から言えば、興梠慎三と対峙する相手選手は常にヒリヒリとした緊張感に苛まれている。
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