リーグ戦29試合ぶりの無得点、ダービー敗戦の要因を探る【島崎英純】2017Jリーグ第9節・大宮アルディージャ戦レビュー

大宮の選択

『さいたまダービー』は独特な空気に包まれるのが常で、たとえ大宮アルディージャが今季公式戦未勝利でリーグ戦最下位に沈んでいても、浦和レッズが爆発的な攻撃力を誇示して首位に君臨していても、勝敗の行方は蓋を開けてみなければ分からないことは誰もが理解していた。

大宮の渋谷洋樹監督は背水の陣を敷いて究極的な守備布陣を組んだ。システムは定型の4ー4ー2だが、対人能力に優れるボランチ・金澤慎をバックラインに吸収させる疑似5バックを形成して浦和攻撃陣へマンマークで付いたのが象徴的だ。昨季の大宮はマッチアップ策を取らずにスライドディフェンスで対応していたことを思えば、これは明確な浦和対策である。

そもそも今季の大宮はスライドディフェンスが形骸化していて、緩いアプローチを相手に突かれて失点を重ねていた。対戦相手は左右にワイド攻撃を仕掛ければ、大宮守備網が付いてこれず、簡単にゴールへの道程を導けたのだ。ノーマルスタイルでは秩序を保てないことを悟った渋谷監督は、ホームスタジアムで堅牢な守備組織を築くことを決断した。もとより、本来の大宮はディフェンスブロックの強固さが下支えだったのだから、今回の所作は原点回帰とも言える。

また渋谷監督は中盤ボランチに金澤と岩上祐三、そして両サイドに茨田陽生、長谷川アーリアジャスールを据えた。この4人は全員ボランチでプレーできる選手たちで、その彼らが横並びしたわけだ。各人攻撃特性も備えるものの、守備面のスキルを十分に有する面々が並べば強固なラインディフェンスが生まれるのは必然だ。

浦和も当然大宮の専守防衛を予測していたはずだ。自陣に篭もる相手をどう攻略するか。基本コンセプトは慎重な後方ビルドアップからの縦パス供給、もしくは機敏なサイドチェンジパスだったはずである。ただ今季の対戦相手は果敢にバックラインを押し上げるチームが多く、極端にブロックを築く大宮のような相手と対峙するのは久しぶりだった。

森脇良太が語る。

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