【過去2週間で最も読まれた記事】【特別無料掲載】【浦研プラスインタビュー&ストーリー】平川忠亮ー16年目の旅路

終焉への覚悟

危機感を備えながら、平川は2016年末に契約更改の場を迎えた。クラブからは契約更新を打診され、彼はそれを受け入れて浦和レッズの一員で居続けることを決断した。

「クラブから契約更新のオファーを受けた時は嬉しさと、正直戸惑いもあった。自分の中では去年で終わってもおかしくないと思っていたから。もちろん現役を続ける準備はしていたけど、それでも来年またプレーするとなるとね。一歳ずつ年は取っていくわけで、体力、フィジカルが落ちていく中で去年あれだけしかできなかったことを、今年どれだけ選手としてチームに貢献できるのかなとは思った。その意味で葛藤はあったね。選手としてやるからには、ここに居るだけじゃ意味がない。試合に出て、勝利に貢献するのが選手である俺の一番の仕事だから」

選手の挟持を備え続ける。一方で彼は、若き頃とは異なる感情も携えている。今の自分にしかできないこと。レッズを高みに導くためにすべきこと。選手たちの取りまとめ役としての役割を与えられた時、彼の熱意はポジティブに昇華されていく。

「正直、仲間の取りまとめ役としての役割をチームから与えられることに関しては、もう悔しくない(笑)。俺もう、38歳だから。これが30歳前後で、まだ全然プレーできるのに、『まとめ役として、選手兼コーチみたいな感じで』と言われたら悔しいと思うし、『まだできるよ!』って思うかもね。でも2,3年前から意識が変わってきて、ピッチ以外でもやらなきゃいけないこと、それをやるのも俺の仕事だなと思っている」

20代の平川は自らの立場が確立されないと悔しがるタイプだった。溢れる熱情を抑え切れずに本音を吐露し、自らの意思を押し通そうとする野心があった。しかし、今の彼は異なる感情を備え持つ。

「今は皆が良いプレーをして勝利する姿を観ると純粋に嬉しい。昔は自分が試合に出て勝ちたい欲求が強かった。でも年々、それは変わりつつある。去年は外から観ている方が圧倒的に多かったけど、それでも『皆、良いサッカーをしているな』なんて思っていた」

浦和レッズで16年もの間プレーし続け、様々な監督、選手と共に戦い、辛い別れを経験してきた。、その中で、彼は今のペトロヴィッチ監督体制のチームをどう評価しているのだろう。

「これまでの体制の中では最も長く継続している組織だよね。その間に俺の周りの選手は皆歳下になってしまったけど、彼らはとても生き生きしているように見える。これは監督の色なのかなと思うけど、ミシャ自身の人の良さが出ている、本当に温かいチームだと思う。こういう歳になってもミシャが俺を必要としてくれる中で、俺もミシャのためだったら何でもやりたいという思いはある。でも、それでもこのチームは未だにリーグタイトルを獲れていない。結局プレーするのは選手たちで、周囲からは監督が勝負弱いとか、タイトルを獲れる指揮官じゃないとか言われているけど、結局獲れていないのは選手だから。そこは選手がどれだけ責任を携えているか。自分たちの足りない部分を認めて、そこを突き詰めてやっていけるか。それが今のチームの唯一の課題だと思う。去年のチャンピオシップでもそうだけど、ああいう戦いになったら戦術だけじゃないから。普通のシーズンの戦い方とは違ってくるから。鹿島の上手さもあったけど、ウチに足りないものは絶対にあったと思う。悔しいよね……。でも、答えなんて出ないんだよ。全てはピッチに立つ選手にしか変えられない。例えば、ベンチに入れなかったら俺も変えられない。それは試合に出た選手が責任を持って戦わなきゃならない。そこで何かを感じ取って、年々悔しい思いをしながら、過去の自分達を超えて勝ち点を積み上げている今だからこそ、今年が大事だよね。今年、もしリーグタイトルを獲れないと、もうないかなとも思う。今年が現体制でリーグを獲得できる最後のチャンスだと思ってやったほうがいい。毎年悔しい思いをしているのを、またコロッと忘れる選手がいれば、絶対にリーグ優勝なんてできない。如何に今までの悔しさを携えて1年間を戦えるか。今のチームは、自らの責任を果たす力を問われている」

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