【シーズンレビュー】2016浦和レッズ検証⑥最終回—秩序とは……

究極のルーティーンがもたらした成果

ミハイロ・ペトロヴィッチ監督は今の浦和レッズを統率する絶対的な指揮官だ。コーチングスタッフ、選手たちからの信頼が厚いのは周知の事実で、だからこそ浦和で5年に渡り指揮を執って好成績を維持してきた。ただ、ペトロヴィッチ監督は2016シーズンにYBCルヴァンカップ(旧ヤマザキナビスコカップ)を制するまで、タイトルという確固たる称号を一度も得られなかった。

ペトロヴィッチ監督が施す練習メニューはルーティーン化されていて、シーズン中はほとんど変化がない。直近のスケジュールによってミニゲームなどの実戦メニューを省略することはあれ、仔細な戦術指導や守備組織、セットプレーの約束事徹底などはほとんど行わない。ただし、攻撃パターンの反復についてはシーズン中も頻繁に訓練されていて、その点に指揮官の信念が垣間見られる。

ペトロヴィッチ監督が志向する攻撃メソッドは究極のパターンが基盤で、選手たちはその習熟に努めて精度を上げていく。単純にパターンと言っても、その種類が多岐に渡れば相手の脅威になる。ペトロヴィッチ監督率いるチームが年々ベースアップを果たすのはパターン増加によるバリエーションアップと、それを実践する選手たちのスキルアップに要因がある。浦和は2012シーズンからの5年間で主力が固定化した傾向があり、そんな選手たちの個人的成長とチームの成熟は相関関係にある。

浦和のチーム成績は年々向上していて、2016シーズンの今季はJリーグ年間34試合で勝ち点を74まで積み上げた。これはJリーグ史上最多タイの数字で、2015シーズンのサンフレッチェ広島と並ぶ偉業だ。しかし今季のレギュレーションではリーグ戦の年間勝ち点トップではなく、プレーオフの位置付けで設けられたチャンピオンシップの優勝チームがタイトル獲得の称号を得られると定められていた。すなわち純然たるタイトルマッチで結果を得ることが至上命題であり、浦和はその関門を越える必要があった。

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