【無料掲載】日々雑感【コラム】ー駒井善成・誰のために闘うか

闘志は尽きない

Jリーグ2ndステージ第7節・湘南ベルマーレ戦。浦和レッズは41で大勝した。このゲームでは素晴らしいオフ・ザ・ボールの動きでGK西川周作のロングフィードを受けた関根貴大が先制点をマークした。また大宮戦で途中交代し、次の鹿島アントラーズ戦を累積警告による出場停止で欠場した左サイドアタッカーの宇賀神は、二度とポジションを奪われまいと鬼気迫るプレーを見せつけた。

仲間の力を痛感したことで、一層意欲が湧いた。

「自分もオフ(ザ・ボール)の動きは意識している。動きを工夫すれば、俺の前を通り過ぎるボールにも追いつける。相手よりも1メートル早くスタートすれば、味方のパスに追いつける。ボールを受けた時に1対1になるのではなく、受けた時には相手を外しているような動きをしたい。湘南戦ではウガくん(宇賀神)がすごく良いタイミングで動き出しして、ドリブルをしなくても相手GKと1対1になっていた。俺も、もっとオフの動きをしっかりやっていかないといけない」

負けず嫌いだ。当然対戦相手に勝ちたい。それと同時に、日々切磋琢磨する仲間にも譲れない想いがある。

「関根やウガくんは仲の良い友人で気さくな仲間だけど、ライバルだから。そういう選手が活躍するのは嬉しいけど、何て言ったら良いんですか……、モヤッとするというか…。正直過ぎるか、俺(笑)。そりゃあ、彼らに負けたくない気持ちはあります」

ライバルのプレーをベンチから見つめたことで、自らの課題を見出せた。チームを勝利に導くために、自らに課せられた使命は何なのか。それを再認識できた。

Jリーグ2ndステージ第9節・川崎フロンターレ戦。体調不良で欠場した関根の代わりにスタメン出場の機会が訪れた。右サイドで勝負する。1対1には拘らない。相手陣内を切り裂く方策は幾つもある。課せられた使命はひとつ、チームを勝利に導くことにある。

森脇良太のスルーパスを受けて相手ペナルティエリア内へ侵入する。味方へ絶好のクロスを送るも得点に結びつかない。諦めない。もう一度、完璧なオフ・ザ・ボールの動きから興梠慎三のスルーパスを受けてラストパスを供給した。しかし、またも味方のシュートはゴール枠を越えていった。

己のプレーパフォーマンスが良くても、チームが敗戦すれば意味が無い。試合後に悔しさを露わにしながら、それでも前を向いて言った。

「クロスを2本通して、それでも味方が決められないなら、俺はクロスを10本通します。そうすれば、味方のゴールチャンスが増えるわけでしょ。仲間が決められないなら、それを決められるように俺が多くのチャンスを生み出せばいい。今日の俺は、もっともっと味方をアシストできた。それができなかったことを悔やみます」

激しい競争の場に身を置くために京都サンガから浦和レッズへ来た。試合に出られるようになったからといって、天狗になったつもりなど毛頭ない。AFCアジア・チャンピオンズリーグのFCソウル戦ではPK戦で8番目のキッカーに名乗りを上げ、自らのシュートがGKに弾かれて敗戦が決まった。辛苦と悔恨を経て、もっと上手くなる、もっと強くなると誓った。一途な想いは揺るがない。赤いユニホームを身に着ける者が、不断の努力を怠らないのは当然のことだ。

「僕ももう、プロサッカー選手を6年やってきているんですよ。だから自分が何をすべきか分かっている。腐ってる暇なんてない。そんなんしてたら、時間がもったいない。チームのために、浦和のために、自分の力を最大限発揮する。まだまだ俺は、こんなもんじゃない」

愚直でいい。真摯な姿勢が観る者の心を焦がす。

瞳に宿る闘志。駒井善成は浦和レッズの選手だ。

logo_slider

 

 

前のページ

1 2
« 次の記事
前の記事 »