【無料記事】2016 J1ファーストステージ第7節・ベガルタ仙台戦前日会見[ミハイロ・ペトロヴィッチ監督]

ミハイロ・ペトロヴィッチ監督・仙台戦前日記者会見全文

「仙台はここ最近、彼らが望んでいたような結果が出せていない状況です。結果が出せていないチームの多くは、レッズとの対戦で勝利して今の状況を打開し、いい流れに導きたいという思いで、高いモチベーションで試合に臨んでくるでしょう。

明日のゲームは、決して簡単なゲームにはならない。相手は守備的に戦う中で、カウンターを狙ってくるでしょう。我々としては、我慢をしながらしっかりとボールを動かしていくことが必要だと思いますし、相手を動かしながら隙を見て仕掛けどころの質を上げていくこと、リスク管理をしっかりすることが求められます。我々はここ最近、そうした戦い方をしてくる相手に対して自分たちの狙いをコンスタントに、安定的に出せていると評価しています。明日のゲームは我慢を要するゲームになると思いますが、選手たちは強い気持ちを持って臨んでくれると思っています。

そして仙台戦は我々にとって非常に重要なゲームだと、私は捉えています。なぜなら仙台戦で勝利することで、いい状態でシドニーの試合に臨めるからです。我々にとってはACLのシドニー戦もポイントが必要なゲームになります。それができれば、自分たちがシーズン前に掲げた目標であるACLのグループステージ突破に限りなく近づくと思います。そういう重要なシドニーFC戦の前に、我々は仙台戦で何としてもいい結果を得て、ポジティブな雰囲気で重要なゲームに臨んでいきたいと思っています」

Q  横浜F・マリノス戦で、相手はCKを一本も蹴れず、レッズの自陣でのファウルも少なかったと思います。レッズはほとんど敵陣に入ってプレーをしていましたが、レッズのサッカーの完成度が高まれば高まるほど、逆にミシャ監督が見せたい、見ている方が楽しい、面白いと思うサッカーが見せにくい状況が生まれるというジレンマがあると思いますが、どう考えていますでしょうか。

「そういった質問が今出たことを嬉しく思います。すべての人が、そのことを理解しているわけではないと思います。サッカーをよく理解されているからこそ、そうした質問が出るのでしょう。

私は、メディアの方が、よりサッカーに対して、深い知識と、しっかりした目を持って、サッカーに対して深い考えを持って質問してほしいと思っています。

私はサッカーという競技そのものを愛しています。だからこそ、それを見る人たちが多くいてほしいと思いますし、その面白さを深く追求してほしいと思います。サッカーというのは片方のチームだけが攻撃的にサッカーをしようと思っても面白いサッカー、試合展開にはなりません。90分を通して守備的に、自陣のペナルティーエリア付近に全員が下がって守るような戦い方をしているチームがもし相手を0点に抑えたら、そのときは多くの方がいい守備ができて、相手をうまく抑えられた、と、そのチームを評価するでしょう。

マリノスは前節で今シーズン初めて失点ゼロに抑えられたということで、ある一定の評価を得たと、私は思っています。ただ我々は自陣でブロックを作って守ってくる相手に対し、おそらく5回くらい決定機があったと思います。

我々はリスクを負って攻撃を仕掛け続けています。最終ラインの選手も相手陣内に入り、全員が攻撃的なポジションを取りながら、相手の守備をかいくぐるために動いています。それは大きなリスクを負った戦い方だと思います。みなさんは世界的に見ても稀である組織的なサッカー、もちろん日本では稀なサッカーを見ていると思います。

もっとみなさんに注目して見て欲しいところは、我々はこれだけ攻撃的に、リスクを負いながら攻撃を仕掛けているにも関わらず、その一方では非常に素晴らしい、ベストな守備をしているということです。自陣にブロックを作って守ることが守備というのは過去の話だと思います。それで相手を抑えられればそれがベストのやり方だというのは、そうではないと思います。我々が示しているやり方は世界的に見ても非常にモダンなものです。我々は攻撃をしながら、同時に相手陣内で守備をします。我々の守備は相手陣内で非常によく機能しています。これは最近の傾向の中では新しいことだと思います。

マリノスがCK、FKが欲しくなかったかと言えば、そうではなかったと思います。マリノスが守ってカウンターだけを狙っていたとは、私は思いません。ただ、我々の戦い方がそれをさせなかったというのが私の見方です。その意味では、我々は非常にいい守備ができていたと思います。ただ試合が0-0で、我々が得点して勝利できないと世間の評価はマリノスが我々をうまく抑えたという感じになります。

彼らもCK、FKが欲しかったでしょうし、シュートチャンスを作り出したかったはずです。ただ、シュートシーンに至るまでのシーンが少なかったのは間違いないですし、CK、FKがほとんどなかったのも事実です。それがなぜかと言えば、我々が相手陣内で行っている守備が非常に機能したからです。

我々のチームは相手に対しても、走り、戦って、勝利を目指して全力を尽くしました。唯一足りなかったのはゴールだけです。選手たちはリスクを負って、攻撃的に戦うことで、サッカーの魅力を表現してくれていると思います。ただ、結果が出ないが故に我々のチームが良くなかった、結果を残せなかったとなり、相手チームが評価されることには、『なぜだ?』という思いが強いです。

もし、自分のチームのパフォーマンスが悪いとき、私は公の場でも良くなかったと正直に言うタイプの人間です。福岡、甲府、湘南、この間のマリノスと、失点した試合もありましたけど、ほとんどの試合で、相手チームはチャンスらしいチャンスを作れていなかったと思います。その反対に、この間の広州恒大戦はレッズと広州恒大という素晴らしいチーム同士の素晴らしい内容のゲームができたと思います。ヨーロッパのトップレベルの試合に近いレベルにあったと思います。

広州恒大戦の後、ファン・サポーターたちの中には、こういうゲームをもっと観たいと思った方がたくさんいると、私は聞いています。ただ、この前の試合は多くの方々が今までの相手と変わらないんじゃないかと思ったと思います。広州戦と何が違うかと言えば、片方のチームだけが攻撃的なゲームをしようとしても、いいゲームにはならないということです。日本のサッカーの中で面白いゲームが多く生まれるためには、どちらのチームも攻撃的に戦わなければいけません。でなければ観る者を魅了する、興味を引くサッカーにはならないでしょう。

サッカーという競技を専門的に書かれているメディアの方であるならば、サッカーが今後どの方向性に進み、どういうトレンドに乗っていくのかというのを、しっかりと見て学ばなければいけないと思います。どういうサッカーが競技として人々の興味を引き、これからさらに発展するのかという意味で、サッカーの面白さを皆さんにはもっと表現して伝えていって欲しいと思います。

もちろん、こういう話は気持ちのいいものではないでしょう。ただ、私が思うのは、日本のサッカーが面白くなっていく、発展していくためには、皆さんがもっとサッカーを深く学んで欲しいと思います。なぜかと言えば、サッカーは医学と一緒で、常に何かしら新しいものが出てきます。それをしっかりと観るためには深い知識が必要ですし、よく観なければいけないでしょう。そういうことをしっかりと理解した上で、メディアのみなさんには日本のサッカーのために貢献して欲しいと思います。

42年間、私はプロサッカーの世界で生きてきました。私は常にサッカーの発展のために何かをしたいという思いが強いです。なぜなら私は、そういう使命を持って生まれてきたと思うからです。私は外国人であり、お金を稼いで母国へ帰ればいいと思われているかもしれません。いつか、ここからいなくなる人間です。ただ、私は日本のサッカーが発展するために日々貢献したいという思いが強いです。だからこそ皆さんにお願いするのは、日本のサッカーが発展するために皆さんの力も貸して欲しいということです。守備的な戦い、面白くない試合をすることを皆さんがどう捉えるかで変わっていくと思います。

お互いがリスクを負って攻め合うような試合こそが人々の興味や関心を生み、そこから生まれるものが多くなると、私は思います。みなさんは、自分たちが観る評価の中で、サッカーの発展のために貢献するものを生み出して、世の中に発信していってほしいと思います。

私は、自分の仕事である、このクラブ、チームのための仕事というのが第一にあると共に、愛するサッカーのために、何か貢献していきたい思いが強いのは確かです。

攻撃的なものはサッカーを面白くすると思います。皆さんも攻撃的なものに魅力を感じる記者であってほしいと思います。イタリアでも変わったんじゃないですか。90年のセリエAはその週での9試合で3点入るか入らないかという結果が多かったリーグでした。そこで観る人がどんどん少なくなっていったのは事実です。それでは魅力的なリーグにならないだろうと。あれだけ守備に美しさを感じるイタリア人であっても攻撃的になっていったのですから、リーグを面白くしていくためにはそうした視点でサッカーを見ていかなければならないでしょう。

サッカーはこの間の広州恒大戦のような試合がスペクタクルだったと思いますし、皆さんも面白いと思って観ていたと思います。サッカーは、ああいう試合が多ければ多くなるほど、より人々の関心を引くと思います」

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