仙蹴塵記

梁勇基引退試合ベガルタ仙台レジェンズ[2011-2013]vs.梁勇基フレンズ・第一報 4-4の引き分けで、梁勇基氏は両チーム合わせて4得点。笑顔とともに最後のダンスを踊る

12月14日、ベガルタ仙台で通算18シーズンに渡りプレーした梁勇基氏の引退試合がユアテックスタジアム仙台で開催された。当日は梁氏と縁のある元選手、指導者、それにサポーターや応援してくれた方々がスタジアムに集まり、梁氏を送り出した。

試合前にはピッチ上でのミニサッカーやサイン会、トークショーなど参加者によるイベントを数多く実施。梁氏が選手時代に着用していた歴代ユニフォームもコンコースに展示されていた。梁氏の自叙伝『軌道を描いて』が先行販売(限定版)会で完売するなど、試合前から大きく盛り上がりを見せた。

14時キックオフの試合では、主に2011年から2013年にチームメイトだった選手で構成されるベガルタ仙台レジェンズ[2011-2013](以下レジェンズ)と、仙台や対戦相手、朝鮮民主主義人民共和国代表でプレーした梁勇基フレンズ(以下フレンズ)が90分マッチで対戦した。レジェンズは手倉森誠、フレンズは平山相太の各氏が監督を務めた。主審は西村雄一さん。

梁氏は前半、レジェンズでプレー。前半キックオフ時に、バックスタンドのサポーター自由席には梁氏のデビュー当時の背番号「30」のコレオグラフィーが浮かび上がった。立ち上がりに富田晋伍氏のミドルシュートからCKを得るなど、レジェンズの攻勢でスタートした。3分には太田吉彰氏のミドルシュート、8分には太田氏のクロスから赤嶺真吾氏のボレーシュートと見せ場が続くが、いずれもゴールわずか左へ外れた。梁氏自身は10分に相手陣内でのカットから左サイドでシュートを打ったが、惜しくも枠を外れた。フレンズも13分にカウンターから野沢拓也氏が際どいシュートを打つも、右に外れた。

19分、レジェンズは蜂須賀孝治氏が左サイドで倒されてFKを獲得。梁氏が直接ゴールを狙ったが、高桑大二朗氏の好セーブに阻まれた。22分には右サイドで梁氏が倒され、自ら直接ゴールを狙う。今度も高桑氏に止められた。高桑氏は直後の梁氏のシュートも止めて壁となっている。この22分の時間帯には、仙台OB(在籍当時背番号22)で現在闘病中のシュナイダー潤之介氏に向けた応援歌がサポーターから贈られた。

26分にフレンズの平山監督は、DFの平岡康裕氏を除く10人を一気に交代。レジェンズも28分に一挙3人を交代するなど、メンバーの体力を考慮しベンチが活発に動く。レジェンズにブラジルから駆けつけたウイルソン氏のポストプレーには、スタジアムからどよめきが起こった。32分にはレジェンズがCKを得て関口訓充氏がサポーターを煽る。梁氏のキックに鎌田次郎氏が合わせたが、これは枠を外れた。40分にはウイルソン氏が左サイドで切り返しシュートしたが、わずかに右へ外れた。41分には斉藤大介氏のスルーパスから梁氏、中原貴之氏と繋がりシュートも、打ち上げてしまった。

このままスコアレスかと思われた45分、右サイドの田村直也氏のクロスから梁氏が抜け出し、GK六反勇治氏との一対一を制してついにゴール。1-0でレジェンズがリードして折り返した。

後半開始時にはサポーター自由席に「10」のコレオグラフィーが浮かび上がった。梁氏は後半、フレンズ側でプレー。立ち上がりは46分にレジェンズのウイルソン氏が左サイドからシュートを打ったが、六反氏に止められた。56分には中原氏のスルーパスを受けたウイルソン氏がシュートしたが、これも六反氏に阻まれた。

フレンズは劣勢だったが、57分に遠藤康氏が右サイドからドリブルをしかけ、ペナルティーエリア内で粘っているうちに倒されPKを獲得。フレンズのキッカーは梁氏。しかしこのキックは、後半よりレジェンズに入った関憲太郎氏のファインセーブで止められてしまった。しかし62分、フレンズはペナルティーエリア内でのやたら細かいパス回しから最後は佐藤寿人氏がゴール。1-1に追いつき、フレンズはメンバーで「10」の人文字を作るパフォーマンスを披露した。

追いつかれたレジェンズは66分に蜂須賀氏のラストパスを受けウイルソン氏がシュート。これも六反氏に止められた。69分、クロスに飛びこんだウイルソン氏がペナルティーエリア内でファウルを受け、レジェンズがPKを獲得。するとフレンズが梁氏を交代し、レジェンズに梁氏が投入されてキッカーに。これが決まって、レジェンズが再び勝ち越した。ゴール後は、中田洋介氏とかつてファン感謝の集いで披露したパフォーマンスを見せた。

このゴール後、再び梁氏はフレンズ側で投入された。追いかけるフレンズが攻勢を見せていたが、77分、レジェンズがカウンター。関口氏がボールを運び、赤嶺氏に繋ぐと、最後はウイルソン氏が左足で蹴りこむ。ついに出たウイルソン氏のゴールで、3-1となった。

ゴールショーは終わらない。直後の78分、林卓人氏がレジェンズのFWで投入されてスタジアムがざわめく中、フレンズの萬代宏樹氏が右サイドから抜け出しゴール。スコアは3-2となった。

81分、さらにフレンズがたたみかける。中央で細かいパス交換をし、梁氏が中央に抜け出してゴール。3-3の同点となった盛り上がりも冷めやらぬ中、フレンズは名簿に記載されていなかった岩本輝雄氏を突如投入した。

85分、勢いに乗るフレンズは相手ゴール近くでFKを獲得。西村主審がバニシングスプレーで”LAST DANCE”と書いたスポットから梁氏がゴールを狙ったが、関氏の好セーブでおさえられた。89分、反撃に出たレジェンズは、斉藤氏のパスをペナルティーエリア内で受けた関口氏が踵でゴールに流しこみ、4-3と勝ち越した。

レジェンズが逃げきりか、と思われた45分、ゴール前でのなぜか長い交錯からフレンズがFKを獲得。ここでの梁氏のキックは関氏に止められたが、西村主審がFKのやりなおしを命じ、もう一回梁氏がキック。これが決まって、4-4。全員での梁氏胴上げののち西村主審がタイムアップの笛を吹き、楽しい試合は幕を閉じた。

試合直後は、出場選手とスタッフ全員が一緒に並び、サポーターと一緒に「リャンダンス」を舞った。

試合後、両チーム合わせて4ゴールを記録した梁氏は「みなさんのお膳立てのおかげです。最高の90分を経験できて感謝しています」と仲間とサポーターに言葉を贈った。試合後のセレモニーでも笑顔が絶えない、幸せな門出の日となった。

reported by 板垣晴朗

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