仙蹴塵記

【この瞬間から】天皇杯2回戦・徳島戦 14、16、24、32、68、76分

急造メンバーでもできる限りのファイトをして耐えたが、後半終了寸前に押し切られた。ベガルタ仙台は天皇杯2回戦・徳島戦で、0-1の敗戦により初戦敗退となった。

明治安田J2リーグの第19節・甲府戦(8日)と第20節・長崎戦(16日)との間に組まれた12日のこの試合。仙台にとっては難しい位置づけだった。当然、勝って先に進み、上のカテゴリーの相手とも手合わせしたいところだったが、まずこの試合に臨むメンバーの選考が悩ましい。アウェイ甲府戦から再び移動して徳島で試合をして、週末に現在J2で2位の長崎と戦う上では、リーグ戦に向けて体力を蓄えておきたい事情がある。また、負傷からの復帰が間に合わなかった選手もおり、特に守備的ポジションでは頭数自体が足りなかった。

そうした事情から急造メンバーでの試合を森山佳郎監督らスタッフ陣は選択。甲府戦翌日の9日も回復のためオフに充てたため、徳島戦への練習期間は2日。前日はあまり負荷をかけられないため、このメンバーでの深い戦術練習は実質1日だったという。

そのなかでいかにして勝機を見出すか。徳島はサブメンバーにも多人数でボールを保持するスタイルが浸透しているチームであるため、ボール保持が発展途上の仙台としてはアウェイゲームともなれば守勢を余儀なくされる。その守備を、まずこの組み合わせで徹底しなければならない。センターバックは本職と普段サイドバック(SB)の内田裕斗が組み、SBには普段FWの西丸道人とボランチの工藤真人が入った。最終ラインは特にスクランブル状態だ。練習試合でも、この4バックはまだ試していなかった。

この急造布陣の影響は、守備だけでなく攻撃にも影響する。最低限のラインコントロールとして、内田によれば「上げられるときには上げて、相手がフリーで蹴られるときにはダウン」という原則を徹底。個々の球際での強さもあって対応できたことも多かった反面、押し上げた先の攻撃がうまくつながらなかったことも多く、攻撃は単発になりがちだった。

そのなかでスコアを動かしかけたときは、何ができていたのか。そこでようやく冒頭に挙げた時間の話だ。これらはこの試合で仙台が獲得した直接FK13本のうち、ゴールに近付いた6本を蹴った時間だ。仙台はこの試合で前後半計4本のシュートを打っているが、うち3本がこのFKに関わる。残る1本は77分に鎌田大夢のCKに菅原龍之助が合わせたものだから、シュートはすべてセットプレーの流れから生まれたものといえる。セットプレーのシステムは流れの中とはまた別なので、流れの中での優勢劣勢をこの場面だけ変えることもできる。多人数が関わった形は作れなくてもとにかく相手陣内で積極的に攻撃をしかけ、セットプレーをもぎ取ることも大事だった。

直接FKは、16分のようにポイントから横に流してシュートを狙うこともあったが、他の5本は直接キッカーがゴールを狙う場面から。この日の仙台はスクランブルの中でも、セットプレーのキッカーとして松下佳貴、鎌田、内田の3人がいた。

14分の左寄りの直接FKと24分と68分の右サイドからのものは、松下が蹴った。14分のものはシュートに換算されている。壁に当たった24分と68分のもののうち、後者はセカンドボールを仙台の選手が拾って時間を作り、右から左へつなぐことで中山仁斗のシュートまで持ちこんだ。これは相手GKの好セーブに弾かれた、この日一番の決定機だったともいえる。86分の右サイドからのFKを蹴ったのは鎌田。直接というよりゴール手前で誰かに合わせられれば得点に到ったかもしれないが、これは右にそれた。

そして残る32分の場面。これは松下がカウンターでボールを運んで倒されて得たものだったが、ここでは内田がキッカーに志願した。古巣相手にコースを狙って蹴ったが、ゴール上に外れた。「決めたかったですね。もっと練習します」と内田は悔やむ。この日のメンバーは、苦しい試合の中でゴールへの道筋を探った経験を、今後に生かすことはできるか。

reported by 板垣晴朗

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