仙蹴塵記

【ホームタウンから】東日本大震災の月命日に南三陸町を訪問

東日本大震災の被災地をホームタウンとするベガルタ仙台は、毎年被災地への訪問活動を行っている。2015年からは、まずチーム始動時に新加入選手・スタッフとともにこの地で起こったことを学ぶ活動が続いている。2023シーズンは、月命日にあたる1月11日に被災地訪問を実施した。

選手・スタッフ・クラブスタッフ計62名が今回訪れたのは、宮城県南三陸町。クラブとしては震災遺構や2012年にできた南三陸さんさん商店街を訪れたことがあり、2013年以来の再訪となる。商店街は2017年に移転し、周辺の景色もかさ上げ等で変わったが、震災の様子を伝える場所に足を運び、チームは様々なことを学んだ。

まずは南三陸さんさん商店街にて、地元の海産物を豊富に使った昼食を味わい、しばし商店街を散策。特産の海苔などをお土産に購入した選手もいたようだ。その商店街の端には、1960年チリ地震津波での支援を契機としたチリ・イースター島との友好の印として、モアイ像が佇んでいる。チームはここで、東日本大震災からの復興への支援についての説明をガイドの方から受けていた。イースター島の石で作られたモアイ像は本来島外不出なのだが、長老の特別な許可を得てこの地に贈られたという。

続いて、チームは2022年に完成した南三陸311メモリアルへ。隈研吾氏の設計によるこの建物では、東日本大震災の記録や記憶が伝えられる。チームはラーニングプログラムのもと、震災発生当時の映像を鑑賞したり、避難行動などについて話し合ったりして震災に対する理解を深めた。佐藤仁南三陸町長からも、ご挨拶とともに貴重なお話があった。

最後に、震災遺構である同町の旧防災対策庁舎に赴き、株式会社ベガルタ仙台の佐々木知廣代表取締役社長、伊藤彰監督、蜂須賀孝治が献花した。

選手を代表して献花した蜂須賀はプライベートでもたびたび南三陸を訪れていたとのことだが、今回のプログラムを通じて「まだまだ知らないことがあった」と貴重な機会に感謝した。「ベガルタ仙台に所属している以上は、震災の復興に向けてベガルタ仙台が先頭に立って仙台、宮城、東北を盛り上げていかないといけないと思いますし、それを一番いいかたちで終えられるのはJ2で優勝してJ1に復帰すること」と、あらためて実感した。

宮城県多賀城市出身で今季加入した郷家友太は、自身も被災経験があり、震災発生翌日に七ヶ浜町へ様子を見に行ったときの光景は今も忘れられないという。仙台ジュニアユースから青森、神戸での暮らしを経て、今季は9年ぶりに仙台に戻ってきた。「年数は経っていますが完全には復興していませんし、人の痛みは消えていないと思っています。自分や宮城県出身の選手も一緒に入ってきたので、僕たちが中心となってリーグ優勝をして、宮城県を盛り上げて元気にしていきたい」と、故郷のクラブでプレーするうえでの強い気持ちを口にした。

意義深い一日を過ごしたチームは、オフをはさんで13日から長期のキャンプに向かう。

reported by 板垣晴朗

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