犬の生活SUPER 西部謙司WEBマガジン POWERED BY EL GOLAZO

【エジリの定理】VOL.1 クロスボール「大事なことは中の選手とのコミュニケーションと蹴る瞬間のボールへの集中」(2013/9/25)(1,978文字)

 江尻篤彦コーチにサッカーの「ツボ」を聞く新コーナーです。ジェフは練習で何をやっているのか、どういうところにポイントを置いて指導しているのかを聞き出していこうと思っています。

 次の対戦相手へ向けての準備とか、チーム戦術の確認などは主に監督の仕事ですが、料理を作るときのレシピが戦術なら、ダシをとるとか包丁を研ぐとか、そういうベースの部分もとても大事です。また、練習で何をやっているかは外から見てもわかりますが、技術的に何を意図しているかは見えにくいところがあります。江尻コーチはいつも選手に声をかけていますが、いったい何を話しているのか。

 スモール・チップスとかディテールと言います。うまくなるためのコツですね。プロのプレーヤーですからそこを言う必要のない人もいます。しかし、知っているけれどもときどきできていない選手もいますし、できているけど自覚していない人もいます。なので、プロの現場でもコーチは同じことを何度でも繰り返して言うわけです。

 今回はクロスボールの蹴り方から。江尻さんは現役時代クロスの名手でした。右利きですが左サイドのスペシャリストで、小学3年生のときに「お前はここしかない」と言われて、以来、ずっと左サイドを持ち場としてきた。今回は「職人さんに聞く」でもあります。


――クロスを蹴るときのポイントは何でしょう。
江尻「これはオシムさんが言っていたことですが、『日本の選手は動きながらの技術を磨く必要がある』と。止まっている状態の技術はうまいのですが、動きながらだとそうでもない。教えられていないと。クロスなら、スピードアップしてクロスを蹴るときに、いつ、どのように、中の選手とコミュニケーションをとるか。あとは蹴る瞬間にボールに集中することがポイントになります」

――見るタイミングからうかがいます。スピードアップしたときにボールが自分から少し離れます、そのときに中を見る。
江尻「そうです。ボールを蹴る直前か瞬間にも中を見られる人もいるかもしれませんが、それは例外でしょう。最後はボールに集中しないとクロスはミスが出やすいので、その前に中を見て、どこへ蹴るかは決断する必要があります」

――そのとき、中の選手がどこでほしいかを察知するわけですが、その時点ではまだ中の選手はほしい場所にいるわけではない。

(残り 1021文字/全文: 1974文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ