「柏フットボールジャーナル」鈴木潤

【無料記事】【ユース年代有力選手紹介】 伊藤達哉(柏レイソルU-18) (2014/10/14)

以前、プレーを初めて見た時の印象を一言で言えば、7、8年前、柏U-18のサイドを切り崩していた比嘉厚平(現モンテディオ山形)を見ているかのような感じだった。小刻みなボールタッチとクイックネスを基調とした切れ味鋭いドリブルを得意とし、ただ、ドリブラーというと時にボールを持ちすぎてパスワークの流れを悪くする選手もいる中で、伊藤達哉は柏U-18のスタイルにしっかりと融合しながらも、自らの個性をチームの攻撃に変化を出せる絶妙のスパイスと化す。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

1997年6月26日生まれの高校2年生。以前は途中出場で流れを変える起用が多かったが、今回は白川恵士朗の怪我もあってスタメン出場の機会が訪れた。これまでは左サイドでの出場が多かった中で、この山形ユース戦では右サイド起用となる。

「右サイドではあまり出場したことはなかったんですけど、いつも練習が終わった後に1対1の練習をするんです。その時に感覚的には右でも行けるなというのがありましたし、この前の紅白戦でも右で出て良かったので、右でもやれると思っていました」

そのプレーは、決して怪我人の“代役”などではなかった。ダイレクトタッチ、ツータッチのパスワークで崩していく柏U-18のポゼッションが、彼にボールが渡るとそこから仕掛け、マーカーの逆を取った時には一気にドリブルでぶっちぎっていく。それでいて周囲に良い状態の味方がいる場合は、相手を引き付けて効果的なパスを出す。自分のストロングポイントと、それがチームにどのような影響をもたらすかを十分に理解しているからこそできるプレーだ。

「レイソルの攻撃の特徴でSBがオーバーラップした時に、そこで数的優位で崩して点を取るというのがありますけど、自分は相手が対策をしてきた時に良さを出していけたらいいと思っています」

その意識は、今回の山形戦で柏が奪った5得点のうち、自らの1ゴールを含む3得点に絡む大活躍にもつながった。しかし、伊藤の言う「相手に対策をされた時」という機会が、本当に意味で訪れるのはこの後だろう。佳境を迎え、優勝決定をに王手をかけたU-18プレミアリーグ、そしてその先にあるウェスト王者と対戦するチャンピオンシップ、その強豪と対峙するギリギリの戦いの中で彼の持つドリブルは柏にタイトルをもたらす大きな力になりそうな気配があり、そもそも今回の大活躍でレギュラー争いの序列も分からなくなってきた。

自分はシュートはそんなにうまくないので、点を取るというよりはチャンスを作り出す、攻撃に関わるのが仕事」と本人も話しており、確かにチャンスメークに関しては申し分ない。あとはフィニッシュの精度やシュートテクニックが備われば、今季のプレミアリーグのタイトルはもちろんのこと、まだ2年生だけに来年以降への飛躍にもつながる。非常に楽しみな選手だ。

Text by 鈴木潤

 

 

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ