2024シーズン総括 #4 【いわてグルージャ盛岡】
遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます。
本年も当メディアをよろしくお願いいたします。
昨年12月から2024シーズンの総括をシリーズでお届けしていましたが、今回はその最終稿となります。
前回は正しい方向を向いて歩み出したクラブ体制をお伝えした。第4回目の本稿ではクラブではなく、新チームの補強や契約更新に触れつつ、展望を考察していきたい。
1月11日現在、12人の新加入と、7人の契約更新がリリースされている。
【新加入】
町田悠(FW)
和田昂士(CB)
斉藤拓(CB)
若林学歩(GK)
松村航希(WB)
藤島樹騎也(IH)
島津柚杏(CB)
河合秀人(CH、WB、IH)
濱名真央(WB)
中里崇宏(CH、CB、WB)
藤本憲明(FW)
ウォン テラン(WB)
【契約更新】
キムソンゴン(GK)
新玉瑛琉(WB)
柳世根(CB)
山内舟征(CB)
弓削翼(CH)
小松寛太(FW、IH)
シラス(FW)
水野晃樹GMは就任記者会見の後、「今季の編成は28人に設定している」と話してくれた。現在、19人が確定していることから、残りは9人となりそうだ。
昨季の所属選手でまだリリースが出ていない中ではオタボーケネス、西大伍、深堀隼平、道本大飛、中村充孝、小暮大器、高橋峻希らが星川敬監督のもと起用された。彼らの去就はいまだ不透明であるが、9人の中には少なくともGK1人、CB1人、CH2人は含まれるだろう。特にGKとCBには経験がありリーダーシップを取れるような人材の獲得、CHにはカウンタープレスやセカンドボールでボールを奪い切れるいわゆる猟犬の役割を果たせる選手の獲得が期待される。
それにしても、ここまでの編成を見ると、予想以上に質の高いメンバーをそろえた印象だ。クラブ、特にも水野GMの手腕に寄るものが大きいが、クラブとしての体制の立て直しだけでなく、本気で1年でJ3復帰を考えていることが伝わってくるような質の高い仕事を果たしている。昨季の同時期と比べれば雲泥の差だ。
契約更新組で特に注目したいのが小松寛太と弓削翼の二人。
小松は昨季、シーズンを追うごとに起用が減っていったが、持っているものに間違いがないことは序盤戦のプレーぶりだけでも一目瞭然だ。星川監督も「昨季終盤戦でもっと使いたかったが、コンディションのところで難しく、手痛かった」と振り返るなど、ボールに関わりながら攻守にスプリントもかけられるその能力には期待を示している。昇格を目指すことと星川監督の哲学を合わせて考えれば、得点を奪うサッカーがベースとなる。しかも、星川監督はポジショナルプレーを志向し、5レーンへのこだわりも強い監督という印象だけに、システムを【3-1-4-2】を基本線に考えているとすれば、小松は2トップの一角、もしくはIHでおそらくレギュラー格として計算されているだろう。リズムを作ることだけでなく、10ゴール10アシストが期待される数字になる。
そして我らがキャプテン、弓削翼も復活のシーズンとなる。昨季は第7節の宮崎戦で今季初勝利を呼び込む決勝ゴールをマークしたものの、ケガの影響で戦線離脱。手術も行い、結果的に6試合の出場に終わった。チームが苦しい状態の中、欠場が続き、忸怩たる思いは他の誰よりも強かったはずだ。ただ、グルージャサポーターであれば彼のポテンシャルも知るところだろう。J2で戦った際も短期間とはいえ、無双状態に近い活躍をしたのは今も鮮明に記憶に残っており、攻守に貢献できるオールラウンダーの復活は今季のチームにとって欠かせないものでもある。懸念はケガの影響がどう出るか。足の状態は戻るのか。ブランクをどう埋めていくのか。ここさえクリアできれば、何も心配はいらない。幸い、昨年12月のトレーニングでは元気な姿を見せ、「もう状態はいいの?」と聞くと、「もう全部(のメニュー)できます、全然大丈夫です」と回復ぶりを話してくれた。フィットネスを上げ、試合勘を取り戻し、キャプテン翼の逆襲に期待したい。
また、新加入選手も目玉となり得る選手が多い。
特に星川監督の戦術の肝ともなるWBには濱名真央、松村航希ら質的優位を築けそうなメンバーを獲得。さらにIHとWBを兼任できる河合秀人も頼もしい存在だ。
藤本憲明、中里崇宏という実績のある選手も加わった。昨季はベテラン選手の数が多く、稼働率も低かったことが低迷の要因の一つになったことはすでにクラブ内で共有済みで、水野GMも星川監督も「ベテランも必要。ただ、シーズンを通して試合に出続けられて、走れる選手が獲得の基準」という旨を昨年12月の段階で話していた。35歳の藤本、34歳の中里に加え、31歳の河合もベテランに位置付けられる年齢に差し掛かっているが、昨季の実績や各種のデータをもとに「走れる、1年間起用できる」という根拠があっての獲得になっているはずだ。
また、ヘッドコーチには岩手とJFLを熟知する菊池利三さんがチームに凱旋。星川監督とも1995年から1年間、ヴェルディ時代にチームメートだったこともあり、旧知の仲だ。この起用もチームにとって、クラブにとってプラスに作用するに違いない。
いよいよ明日は新体制発表会。ここで新加入や契約更新のサプライズはあるのか。そしてどんなキャンプを過ごし、どんな開幕戦を見せてくれるのか。楽しみなシーズンインは目の前に迫ってきている。
※来週は星川監督インタビュー、菊池ヘッドコーチインタビュー、新加入選手のコメントなどをお届けする予定です。