「GELマガ」鹿島アントラーズ番記者・田中滋WEBマガジン

「僕が矢面に立っていくよ」岩政大樹が背負う不退転の決意/【プレビュー】天皇杯準決勝・ヴァンフォーレ甲府対鹿島アントラーズ

茨の道を歩んでいけるのは覚悟を持った人物だけだ。

岩政大樹が提示する“新しい鹿島”が結果を出せていない。勝てなければ批判の声が大きくなるのは当然のこと。ただ、これ以上、目の前に横たわる問題と向き合うことを避け、視線を外にむけ続けるならば、愛する鹿島が本当に古豪になってしまう。それがわかっているからこそ、批判が渦巻くのを承知の上で、監督として、もしくはそれ以上の存在として、岩政大樹は進むべき道を示し、礎を築こうとしている。

そして、クラブもそれをわかった上で岩政大樹に託している。なぜ、そう感じるのかは、岩政監督自身の言葉に触れてもらうのが一番だろう。

 

 

FC東京戦、試合の詳細を振り返ることを「試合の映像を見直さないと、言葉出す難しいいう試合内容だった気がします」と、保留していた岩政監督は、しっかり分析を施していた。

「多分、この9月、10月の試合はだいたい試合の入りは圧倒する入りができていると思います。それがファーストプランであったとして、その後に起こってくる現象。つまり、相手が慣れてきたりとか、ゲームが落ち着いてきたりとか、自分たちのやり方を相手も把握してきて、そこに対策を打ってきたときにどのようなセカンドプラン、サードプラン。プランというか、解決策をどのようにチームを見つけていくかということに関しては、毎試合見られている課題だと思っています」

より具体的に言うとビルドアップだ。押し込み、チャンスがつくれていた時間帯が終わると、自陣に押し込まれたところから前進できなくなってしまった。それは、監督が言うところの設定・設計の問題なのか、それとも選手がミスをしたことで弱気になってしまったのが原因なのか、質問を重ねていく。

岩政監督はまず、監督としてのスタンスから話を始めた。

「言い方が難しくなりますが、僕の監督としての哲学とまで言わないけども、“勝ったときは選手のおかげ、負けたときは監督の責任”。“勝たせるのは絶対に選手だ”と。それは、いつも勝つたびに負けるたびに思うことです。今回の負けも、考えれば考えるほど僕の設定設計の問題だというふうに思ってますので、それも選手たちに伝えました。

確かに最終的にはプレーするのは選手であって、そこでミスが起こったとしても、それをやり続けられる選手、メンタリティを持ってる選手というのはいます。とはいえ、それもわかった上で僕はメンバーを選んでるし、わかった上でやり方を設計、設定するわけで、それでうまくいかなかったら結局僕の責任だというふうに行き着くんですよね。

なので、ピッチ中央自陣の中央でのミスがいくつか複数の選手に起こってしまって、少し臆病になってそれぞれの選手がボールを受けるのを怖がっているようには確かに見えました。ただ、そのとき明確に逃げ道があれば、おそらくそれは解決できたんだろうと思う。そこの部分も僕に足りなかったことだろうというふうに思います」

確かに、設計・設定に問題を抱えていたという結論は、監督として進化するためには必要な視点だ。すべての結果を自分の立場に帰結することでレベルアップを図るのは当然のこと。ビルドアップで困ったときの逃げ道を用意できなかったことを悔やむのは監督としてあるべき姿だ。

ただ、同時にピッチでプレーしているのは選手、という問題もある。選手たちがミスをしてしまった自分と向き合い、自分たちで逃げ道を探れるようにならなければ、チームとしての進歩はない。しかし、岩政監督は次の段階に進んでいる、と感じていた。

「前々節、鳥栖戦でうまくいかない時間帯がずっと続いてそのまま失点したことがありました。そのとき僕は選手たちに『それはよくない』という話をして、選手たちもそこを解決しようとトライしていました。今回、FC東京戦でもビルドアップがうまくいかないということで、僕なりにピッチの選手の中に入り込んでみると、おそらくこういうことをやってみよう、ああいうこともやってみよう、と考えようとはしてた。

でも、そこに明確なものが見つからなくて、なかなかうまくいかなくて、そのまま自陣を出られないということが続いてしまった。でも、僕はこれを一段階進だ、と捉えてるんですね。策がなくやったんではなくて、何かやろうとした、と。なので、ここは僕は選手たちに感謝を伝えました。

僕の設定設計の問題もあっただろうし、その上で選手たちも自分たちでやるべきことがあるだろう、ということで、次の段階に進もうということで共有してます」

 

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