「GELマガ」鹿島アントラーズ番記者・田中滋WEBマガジン

なぜレネ・ヴァイラーは短期間で勝てるチームを作れるのか/【レビュー】明治安田J1第11節 鹿島アントラーズ対ジュビロ磐田

C大阪戦に続く3得点の勝利だった。1点目はCKからの得点であり、2得点目は鈴木優磨と上田綺世のコンビネーション、3得点目は上田綺世の完全なる個人技だったかもしれない。だが、「すばらしい前半だったのではないかと思います」というレネ・ヴァイラー監督のコメントは誇張でも謙遜でもなんでもない。すばらしい内容での勝点3だった。

3月15日の初陣からわずか2ヶ月弱。レネ・ヴァイラーはその狙いを明確に感じさせるチームを作り上げた。

サッカーは、ペップ・グアルディオラの出現により、彼以前と彼以後では明確な差が生まれたと言われて久しい。「システム」からチームをつくろうとするやり方に限界が生じ始めたためグアルディオラはポジションの概念を崩し、“偽9番”や“偽SB”といった「タスク」と「シチュエーション」からチームを形づくることを始めた。

欧州にいれば、その変化を実感する場面は多いのだろう。しかし、日本にいるとなかなか目にする機会がない。タスクとシチュエーションによるチームづくりの解説を目にすることはあっても、それが実際のチームでどうやって構築されていくのか深く理解することはできなかった。

もちろん、Jリーグでも偽SBなどのやり方をシステムの中に組み込んで運用するチームはあった。ただし、それはあくまでも既存のシステムに変化をもたらすために導入したもの。チームビルディングの初期段階からシチュエーションに即したタスクを与えることでチームを形成した例はなかったように思う。

しかし、レネ・ヴァイラーは選手たちに簡潔なタスクを示すことで、あたかも11人が共通の意志を持って連携・連動していくチームを作っている。Jリーグでも(他のリーグで彼が残した業績と同じように)ごくわずかな期間で成果を出し始めた。目の前でその変化が起きていく様子を見ると「なるほど、こういうことか」と一気に理解が進んでいく。

C大阪戦に続く磐田戦での勝利は、鹿島アントラーズが新たな時代に突入したことを内外に知らしめるマイルストーンとなる勝利だった。

 

 

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