秋田サッカーレポート

【無料公開】シンポジウム「秋田の未来に必要なスタジアムとは? 〜北米スタジアム視察と日本におけるスタジアムの現状〜」議事録

 

小原さん:手法というのは、関連連携事業というもので言えば結構たくさんあるんですね。自治体さんに非常にお馴染みの指定管理であったり、あるいはPFIであったり。PFIの中でもコンセッションという方式で運営者に自由度を持たせたり。あるいは都市公園であれば管理許可といった仕組みになったり。大阪市がちょっとアクロバット的にやっているのは元々行政財産にしたスポーツ施設を普通財産に戻して普通に建物をオーナーとして貸し付けるみたいなことだったり。あるいはふるさと納税を活用したスキームだったりというのが色々あるかなと思っています。その中で補助金の話はまた後になりますか?

 

岩瀬社長:そうですね。スキームの話をお願いします。

 

小原さん:そうすると、ひとつはエディオンピースウイング広島のDBプラス指定管理というところが割と作りやすいかなと思っているところでございます。これは指定管理に想定されていたのがサンフレッチェ広島ですが、施設整備をDBというところでこれデザインビルドという意味合いですけれども。要は設計建設を一体的にやって、そこでチームの方針をある程度聞くことによって、DBというやり方で設計と建設を一体的にチームの方針を聞きながら作って、管理運営するのはチームですと。ただ、ここは公募になりますので、必ずしもチームになるとは限りませんけども。そういったやり方で作ってるというのがひとつあるかなと思います。

もうひとつはPFIという手法ですね。ここで書かせていただきますと、事例としては北九州のミクニワールドスタジアム北九州であったりアリーナの横浜文化体育館がこれにあたります。こちらも優れているのは、やはり設計、建設、管理、運営を一体的にやるという手法です。いままでの公共事業の従来型の公共事業ですと、設計して建設して管理運営して。その管理運営のところだけ指定管理者を使ってという形だったんですけど。それですと実際にチームだとか管理運営する方が望ましいスタジアム・アリーナができないということで、先ほどのDBにして指定管理者の意見を聞きながら、指定管理者にスポーツチームの意見を聞きながら作ってやるものだったり、こういったPFIというやり方が出てきていたりします。

そこにまたふるさと納税とか…これ80億で作ってるアリーナですけど、40億円が企業版ふるさと納税で調達しているというものです。さらに国の補助金を上手に使っているので、群馬県の太田市が所有しているものなんですけれども。大田市が払った金額って、80億から50億引いて30億で素晴らしいBプレミアができるようなアリーナを持っているということなので。こういった資金提供を組み合わせながら事業をやっていくというところが望ましいのかなと思います。

 

岩瀬社長:最後にはぜひ秋田に合うスキームってどれだろうっていうことをちょっとお聞きしたいんですけれども。まさに先ほどありました企業版ふるさと納税に関しましては、皆さまもご存知の通り、本当に多くのここにいらっしゃる企業の皆さまにもご協力をいただいて県内外多数の企業の皆さまのご支援によって今回潟上市にわれわれ、練習場とクラブハウス、合わせますと総工費すべて天然芝とクラブハウスで5億になります。これ鋭意3月まで集めておりますが、おおよそなんとなくゴールが見えてきたかなというところでしっかりと集めてまいりたいなと思いますけれども。

私どもも計画を持ってこの企業版ふるさと納税を集めてきました。皆さんからすると練習場でこれ5億円が今回集まりました。今回、このスタジアムとなれば、根拠をわれわれはしっかりと示さなければいけないなということで、自力でなんとかこれを成し遂げようということで今回の3月までになんとか全額5億を企業版ふるさと納税集めてやっていこうとなった場合、じゃあスタジアムならどれぐらい集まるのかっていうことは、ぜひのちほどお話ができればと思いますけれども。

最後に秋田において新スタジアム整備、それぞれのお立場から、理想はどれかといった部分で、各パネラーの皆さまには私からリクエストさせていただきたいのは、小原さんはまさにそのどれが秋田に一番手法が合うかといった部分を中心にお話いただいて。土屋さんは、秋田のこの諸事情、地域課題等々に合った地域にインパクトを与えるような部分に触れていただきながら理想のスタジアムのお話いただければと思います。永廣様には北米スタジアも含めた寒さ対策といった部分を中心に設計を交えてのお話をいただければと思いますけれども。さっそく小原さんの方から秋田に合うのはどれかなというようなことで。

 

秋田における理想のスタジアムとは

小原さん:そうですね。秋田に合うのはどれかなと考えて、ちょっと国内のものを取り上げると、こういったところかなと思っているところです。先ほどPFIかななんて言いながら、こうやって見るとPFIがいないっていうの感じなんですけど。ちょっとたまたまかなと思います。スタジアムのまだ事例がちょっと少ないっていうことなのかなと思っています。

取り上げている中で、どうして特に参考になるのかなっていうところなんですけれども。広島はこのマツダスタジアムとエディオンピースウイング広島。これはいずれも広島市の所有でやってるものなんですけれども。共通するのは多様な資金調達っていうところですね。後でお時間あればちょっとご紹介したいと思いますが。本当に先ほどのいろんな柱をたくさん作ってます。ステークホルダーが増えて大変なんじゃない?っていうところなんですが、そこの協議会をちゃんと持って、協議会で進めながら、脱線したりしないように資金調達と協議会がセットでやっています。

この2つですとか。あとはヨドコウ桜スタジアムとか、あとはエディオンピースウイングもそうなんですけど。これは都市公園に両方ともあって、素晴らしいのは、ここを含む都市公園。たとえば隣接エリア、都市公園全体だったりも、ちゃんと別途、民間活用も入れて開発して、エリア全体で集客する構造をちゃんと持っていると。このヨドコウ桜スタジアムは改修をきっかけに公園自体も非常に素晴らしいものになって集客が非常に増えてます。チームラボが公園内で活動していたり。そういったところで面白い。

アシックス里山スタジアムは先ほど永廣さんからご説明がありましたが、行政の支援を非常に上手に活用している。土地を30年間無償で貸与して、あとは固定資産税を免除してもらう。それからノエビアスタジアム神戸、こちらは新設ではないんですけれども、素晴らしいのはヴィッセル神戸さんが、スタジアムの大規模改修とかスタジアム運営は市の管轄で修繕費を出して、陳腐化しないように、スタジオの中のシートだとか音響、映像みたいなところだったりとか、そういった陳腐化しない、施設価値向上のための設備更新っていうのはチームのほうでやっていると。だからチームがやりたいようにスタジアム作りしたいっていうことなんですね。サンガスタジアム by KYOCERAのように保育園のあるスタジアム。そういった面白さもあります。

 

岩瀬社長:チームと一緒に話し合って作ることって本当に大切だなと思ってます。私たちもいま、それこそソユースタジアムをお借りしてやらせていただいておりますけども。無駄にお金が本当にかかってることって非常に設計上のところで大きいなとも思っております。たとえばあれだけ立派な大型映像装置があるんですけども音響が古いままなので。われわれが毎回大体50万ぐらいの外部から音響をお借りして導入いただいておりますので。新スタジアムになると一体感ですとか高揚感含めて、その辺のことも加味した形でのものが色々できればまた違うかなと思っております。それでは土屋さん、よろしくお願いいたします。

 

土屋さん:現在、われわれスポーツ庁さんの委託業務の中で、スタジアム・アリーナの改革ガイドブックの改訂に取り組んでます。2018年にこのガイドブックができたときにはコストセンターからプロフィットセンター化へということで、スタジアムを通じてどうスポーツビジネスの収益を獲得していくのかというところがテーマになっていましたけれども。それからはや6年ぐらい経ったいま、いろんなスタジアムができていく中で、スタジアム・アリーナによるエリアマネジメント。そこでのまちづくりということがいま一番のテーマに上がってます。

土屋光輝さん KPMGコンサルティング株式会社 アソシエイトパートナー/公認会計士

小原さんからもお話ありましたけども、多様な資金調達っていうお話だったり、ふるさと納税とかいう話の中で、公共のお金だったり民間でもいろんな方々のお金を資金調達してっていう話の中ですと、いろんなステークホルダーの方々にどう価値を提供していくか。われわれは社会価値と呼んでいるんですけども。単に観るだけではなく、クラブが単に儲かるっていうだけではなくて、その地域の方々にどれだけの価値を提供できるのかといったところで。われわれ委託業務の一環で、ここ何年間か、プロ野球、サッカー、バスケ。スタジアム・アリーナで行われた社会貢献活動を全部洗い出しまして、何千件とあったんですけども、その中でどういった社会貢献、社会価値を提供してるのかといったところを体系化したものになります。

9つの社会価値テーマに、スタジアム・アリーナを作ることで影響を与えていると整理しました。地域共通で生じやすいものとしては、その町の経済を活性化するとか、その地域の人々がスポーツをやるようになって健康に寄与するとか。 あとは地域の人々のコミュニティ、つながりが形成されるとか。あとは何か災害とか、いま、気候変動色々ありますので。何か台風が来た時の避難所になったりということで、防災とか。こういったところは地域共通で生じやすい社会価値になりますけれども。

地域によって重要度の差があるものとして、さらに外側にその社会価値ということで。たとえば教育とか育児環境の整備、またはそこの地元の企業さんでも何か実証実験をスタジアムでやったりすることでのビジネスイノベーションだったり、あとダイバーシティ、また環境意識みたいなところにも資するということで。この辺りはやっぱり秋田では何が社会課題、地域課題になっていて何が求められているのか。それを社会価値を創出することで多分皆さんの合意の上で皆さんが支援していくというところにつながっていくのかなと思ってます。

私、エスコンフィールドのところでも携わらせていただきましたけれども。当初、彼らは70%ぐらいで最初はできるんだと。その後にこういった社会価値なり事業を創出していくことでその後の30%は周りの皆さん、地域の皆さんがまちづくりをしていくというところの軸にスタジアムがあるとおっしゃっていたのがすごく印象的で。

北米でもアトランタのブレーブスの地域をお話をさせていただきましたけれども。スタジアム作ることでその地域、エリア自体が潤うというところの中で、どう可変性、拡張性を持たしていくかと。まちづくりの中でどう皆さん活用していくかっていうところも非常に大事なポイントなのかなと思います。

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