【無料公開】シンポジウム「秋田の未来に必要なスタジアムとは? 〜北米スタジアム視察と日本におけるスタジアムの現状〜」議事録
秋田の新スタジアム整備の経緯
岩瀬社長:スタジアムのお話に行ければなと思うんですけども。こちらをご覧ください。スタジアムの秋田県内の整備におけるこれまでの経緯をお話をさせていただければと思います。皆さんから見て左側がクラブの主だったこと、右側がスタジアムに関する動きです。TDKサッカー部から2010年にクラブ化いたしまして、実は皆さん知らないと思いますけども、2012年にはすでに県の方で予算をつけて「魅力あふれるスタジアム調査事業」というものが行われました。それから、はや12年が経ったというような状況です。
一番はやはり2017年の出来事だったかなと思っております。きょうも後援会会長小畑さん、ご出席いただいておりますけども。2017年の9月に後援会が立ち上がり、年末には署名運動をしていただきまして、18万人に及ぶ署名が集まりました。これ全国でも結構異例の数字でございます。吹田のガンバ、そしてその後広島の次に秋田の署名数というような形でございます。一方で、まだその当時ライセンス取れていなくてJ2で優勝したにも関わらず上がれなかったという、Jリーグ史上初めてのクラブになってしまったという形であります。ただ皆さまのご支援ご協力ということで、県議会、市議会の皆さまにも動いていただいて、なんとかスタジアムの暫定的な改修までこぎつけたということで、ライセンスが18年に取得という形です。そして2020年に二度目の優勝でいまに至っているというような状況です。小原さん、各自治体、全国各地で様々なアドバイザリーされてると思いますが、一言感想と言いますか。ちょっと言いにくいと思いますけれどもいただければなと思います。
小原さん:ブラウブリッツさんも長きにわたってスタジアム構想を続けておられたんだなと思っているんですけれども。たとえば先ほどから申し上げたPFIっていうような官民連携事業で順調にスタジアムを整備する場合ってどれくらいかかるんでしょうっていうスケジュール、イメージでございます。これ順調にいっても結論から言うと、ちょっと考え始めて最低でも9年ぐらいはかかるかなっていうものになっています。ただ、もちろん急げばこれに限らずなんですけれども。手順をある程度踏んで順当に行ってもこれくらいはかかってしまう。
たとえば官で計画しても、企画とか調査、調整、庁内外調整っていうものは、大体、スタジアム作ろうかな、どうやって作ろうかなみたいなことを考えるだけでも1年ぐらい経って、予算をつけてコンサル発注してみたいなこともあるんですけれども。具体的にどんなスタジアムにするか基本方針を策定したり。その後にハード系の機能、設備、施設をしっかり検討しましょうというところでこの基本計画という期間があって。その後に民間活力の導入可能性調査だったり、実際に事業者の公募をしていくための公募資料だったり。
事業者っていうのはスタジアムを設計建設して管理運営するように事業者さんを探さなきゃいけない。こうした公募の資料を作成したり、実際に選定したりというところだけで大体5、6年かかっちゃうということです。
結構、急ぐ場合はこの2と3も一緒にやっちゃうとか1、2、3をつなげて1年半ぐらいでやるとかっていうことはできるんですけれども。だいたい設計、建設、いまこれ結構短めですけれども。設計で1年半、建設で2年にしてますけれども。おそらくこれはいま、建設業界の週休2日制の導入などから、もっと長い傾向にあるかなと思いますので。設計、建設だけで4年くらいは取らないといけないのかなという感じになっています。そもそもスタジアムのような大きな事業は時間がかかりますということですね。
ただ、一方でブラウブリッツさんはちょっと時間がかかってしまったなというところを、そもそもどうしてこんなに時間がかかるのかと考えると。スタジアム検討、政府の検討手順とありましたけど。ちょっと字が小さくて恐縮です。
大きく4つのフェーズがあります。事業の目的を整理して、整備検討して、お金、資金収支検討して効果検証をする。こういうフェーズがあって、細かく各ステップがこの青い字のところにあるんですね。その中でステークホルダー。事業の背景、ビジョン、コンセプトというのを考えて、この事業に関わるステークホルダーは誰なのかというところの検討。ここの大きなステークホルダー、実はこういった方々がスタークホルダーになるんですけれども、資金集めのときの重要ステークホルダーが誰なのかなというと、このオレンジのマークをつけた方々ですね。
事業主体が誰かで、資金集めっていうのは主体が変わりますけれども。スタジアム整備にお金を出す可能性のある方々ということで言うと、ホームチームの母体企業であったり、ガンバ大阪のパナソニックスタジアム吹田とかですね。それからやはり自治体さんが資金提供をするということと。あと国の補助金も馬鹿にならないぐらい大きい金額がございます。それから広島のスタジアムは地元経済界も出します。それに加えて事業として回るようであれば、投資家や金融機関がついてくるというようなものになります。そうすると、ここだけでもステークホルダーって6ぐらいあるわけです。それ以外ももちろんステークホルダーはたくさんあります。そうするとスタジアム整備どうしても100億から数百億円前後かかる大きな事業になります。そのために通常、一本足打法の資金調達は難しいと思います。誰か1人で資金調達をするっていうのは難しいんですね。なので、国、自治体、企業、プロスポーツクラブの多様な主体からの資金調達がどうしても求められる。そうするとその資金調達に関する主体、ステークホルダーが増えるとどうしても調整が大変なんです。
なぜかっていうと、それぞれが望むスタジアムの姿っていうのが異なってくるからなんですね。たとえばそれが事業用地なのか、それからお互いの資金繰り。そもそもスタジアムがどうあるべきなのか。あるいはそもそもどうあるべきっていうビジョンに基づいて、どういうコンセプトのスタジアムにするのか。規模、機能はどうするのか、みたいなところがステークホルダーが増えるとそれだけ共通認識を作らなきゃいけない論点がたくさんあるので。ステークホルダーが増えるともうわーっと広がっていっちゃうんですね。なので、こういった方々、たくさんの方々の共通認識が形成されないと時間がかかるということになるということになります。ブラウブリッツさんの場合も多かれ少なかれ、こういった観点が、経緯があったのかなと思っております。
岩瀬社長:まさに本当に長きにわたり議論をしておりますけど、そういった観点が本当にあったんではないかなと思いますけれども。ちょっと次に、それこそこのスタジアムの基準の緩和というものが今回行われて、今回どうだったのかというような形で、私の方から一旦簡単にスタジアムのライセンスがどう緩和されたかっていうことをご説明をさせていただければと思います。
それこそ土屋さんとは検討委員会でお話をさせていただいて。今回、入場可能数に関しましては変わらずにというような形でJ1、15,000。J2、10,000人。そして椅子席ではJ1、1万席以上。J2で8,000席以上とだいぶ緩和をされてきました。
ただしというところが非常に重要なポイントでございます。理想のスタジアムの要件を満たした場合。人口等の状況や増設の可能性、入場料収入の確保などのための施策等を踏まえて理事会が総合的に判断したら5,000人以上で基準を満たすものとするというような形で。いまもそれこそ穂積市長が5,000人という形からまずは検討をスタートしていこうということでお話をしていますが、実際、われわれ5,000人じゃなかなか経営できないかなと思っています。いまでももう4,000人超えておりますので。
私たちの想定で考えますと、自分たちの自力でスタジアムができるまで6,000人の平均までは持っていこうということでおります。実は新設のスタジアムの整備効果、来場者効果っていまほとんどのスタジアムができているところをパーセンテージで出すと153%っていう数字になってます。なのでわれわれが6,000まで集めておけば、9,000が新スタジアムになると一気に集まるというような形でございます。
理想のスタジアムって何なのかっていうと、アクセス性に優れてますよねと。今回、八橋という候補地がはっきりと出てきまして、市長も年内中には確定をさせたいということを言っていただいてます。八橋はアクセス非常にいいです。そしてすべての観客席ですね。間違ってはいけないのは、グラウンドではなくすべての観客席ですね。観客席は屋根で覆われている。ビジネスラウンジ、スカイボックス、高速通信設備。そしてフットボール専用スタジアムである。フットボール専用スタジアムって本当大事だなと思いました。
今年、われわれが劇的な勝利を遂げたゲームってアウェイジェフ戦、アウェイ仙台戦なんですね。いずれもフットボールスタジアムなんです。やはりフットボールスタジアムで起こる作品作りっていうんですかね。サポーター同士が声を張って応援する、それに奮起されるように選手たちもやはりいいプレーをしてくれるんだなということを改めて私たちも感じた次第です。
永廣さん、お待たせいたしました。実際にこの入場可能数の緩和において国内のスタジアム整備状況といったものがどう効果、影響があったかといった部分も踏まえてお話いただければと思います。