【無料公開】本田圭佑さん考案の育成年代向け4人制サッカー「4v4」の大会を秋田で開催。来場の本田さん「予測できない状況に応じて、自分で考えてベストの選択をすることが大切」
サッカー元日本代表の本田圭佑さんが発起人の4人制サッカー「4v4(フォーブイフォー)」の秋田県大会が8月25日、秋田市のソユースタジアムで開かれました。
2023年8月に発足した4v4の対象となるのは育成年代(U12、U10)の子どもたちで、今大会では小学1年生から4年生までの県内外の23チームが参加しました。独自の競技ルールがあり、その主な内容は下記のとおり。
- 試合時間は10分
- 原則的にコートサイズとゴールサイズはフットサルと同じ
- ショットクロックは20秒
- 相手陣地内でのゴールは2点、相手陣地のペナルティエリア内からの得点は3点
- スローインやキックインではなくドリブルイン
- 選手交代の回数は無制限で、1人1回以上フィールドに立つ必要がある
- ベンチメンバー2人以外はピッチに入れず、交代も含めた試合運びを選手たちが考える
- 保護者や指導者の応援は可能だがアドバイスやコーチングは認めない
- 大会はポイント制で、負けても何度でも挑戦可能
当日は予選リーグと決勝トーナメントを実施。大差がつく試合も僅差の試合もあるなかで、子どもたちは適時休憩を取りながら熱戦を展開。ある試合はPK戦にもつれ込み、PKを外して落胆する選手を仲間が激励するシーンもありました。
決勝戦にはスペシャルゲストとして本田さんが来場。両チームのプレーをピッチサイドで見守り、閉会式ではプレゼンターを務め、子どもたちに「試合中のハプニングは予測できない。予測できないことに対して自分で考えて、状況に応じてベストの選択肢を選ばないといけない」と伝えました。
閉会後、本田さんがメディア向けに囲み取材の場を設けてくれたので、その内容を掲載します。
–秋田の子どもたちのプレーを見た印象について。
決勝、とくに優勝したチームはレベルは高く、初めてと言っていたんですけど、初めてとは思えない。戦術面において、だいたい初めてのチームはもう少し淡泊なサッカーの仕方になるんですけど、けっこう考えられた戦術になっていたという印象を受けたので、ちょっと驚きました。
–秋田の子どもたちは伸びしろある感じでしょうか。
もうかなりあります。
きょうの感じだと、ジャパンカップでの活躍も期待できるんじゃないかなと思います。
–初めて4人制サッカーをやった子どもたちが多く、「シュートをたくさん打てて楽しかった」などの声が上がっていました。「4v4」という競技から子どもたちに学んでほしいことについて。
いまの「シュートがたくさん打てて楽しい」というところは、なんでそれが起こるかというと、フットサルは、ボールが外に出たときにキックインからスタートなのに対して、(4v4では)ドリブルでそのまま中に入っていくことが許されるルールを作りました。それがシュートがもっとも増えている大きな要因です。
劣勢のチームがシュートゼロで終わるというサッカーの試合もたくさん観てきて、これ(4v4)に関してはキックインで入る必要がないので、ボールが外に出たときに劣勢のチームももしかしたらシュートまでいける。そういった作りにはなってます。
きょう観た限りでは、非常に、まだまだ伸びしろがあると思うんですけど、優勝したチームを観ていると、秋田の選手のレベル、子どもたちのレベルは悪くないんじゃないかなと思います。
–秋田県出身者で男子サッカーのワールドカップに出た選手はいません。この競技からというところでしょうか。
それは僕は知らなかったですけど、当然その可能性があると思います。秋田はバスケットもそれなりに盛んだというふうに認識しています。子どもの才能は全国の中でもそんなに劣っていると思わないので、この大会がひとつのきっかけになればうれしいなと思います。
–子どもたちに伝えたいことについて。
大きな夢を持ってほしいと思いますね。僕自身、その夢のおかげでいまがあると思っていますから。どんな夢でもいいんですけど、できれば人に笑われるような大きな夢を掲げて、それを持ち続けてほしいなと思います。
–今大会で全国で戦うチームが出ました。小さいころから全国を経験することで、広い視野を持つのも狙いでしょうか。
U-12の全国大会はもともとあったのに対して、この年代の全国大会がなかったので作ったというのがきっかけです。やはり子どもたちは、なにか自分が好きになったことで上を目指したいというのは必然だと思っています。そういう意味では、去年この大会を作ってすごい喜んでもらえたと実感もしてます。徐々に全国に普及し始めているので。
もちろんサッカー選手を輩出するという意図もありますけど、そうじゃなくて。監督がいないというルールにもつながっているんですけど、ほとんどの子たちはプロにならないのは事実です。それでもこの年代から、いろんな学校で机に向かって勉強するだけじゃなく、スポーツを通じて必要な考え方やメンタリティみたいなものを育むきっかけにしてもらえると、将来サッカーの方面に進まなかった子どもたちが、大人になったときにリーダーが生まれるみたいなことは、大きな視野でいうと期待してます。
–監督・コーチの指示がなく自分で考えることを強調されていました。ご自身の現役時代からそうした問題意識があったでしょうか。
そうですね。僕はちょっとひねくれていたんで。子どもの頃から、多くの大人が言うことに疑問を感じてたっていうのがあって。ふたを開けたら日本に住んでない生活が、結果としてはサッカーを通じてですけど、こんなふうになってしまったと。
そのイメージは(善し悪し)両方あると思ってますので。日本に足りないのはバランスが悪いと。あまりにも押しつけてしまったりとか、今度は緩めようと思ったらあまりにも緩めてしまったりとか。間を取りにいかないといけない。僕もこの4v4を作っていつも言っているのは、サッカーもやらないといけない。サッカーで学ばないといけないことは、サッカーでないと学べない。でも4v4は、よくも悪くもサッカーでは学べないことが学べます。そういうふうに、サッカーとは違う競技にしたという意図もあります。
小さい子どもの年代において、のちのち、否が応でも監督のいるサッカーの文脈で、上を目指さないといけなくなります。でもこの段階では、やはり子どもたちが自分で考えながら、のびのびと、失敗もたくさん経験しながら、失敗を許容するルールにもなってます。指導者がいないなかで考えるというベーシックを、この競技で学んでほしいなと思ってます。
–秋田県はサッカーの登録選手数が最下位です。この4v4を通じてサッカーを始めるきっかけになるような手ごたえを感じたでしょうか。
その最下位だっていうことは知らなかったですけど、でもこうやってプロのクラブ(ブラウブリッツ秋田)があって、そしてJ1を目指しているクラブがあるというのは、それだけでも本当にすばらしいことです。子どもたちにとっても目指すものなので。それがあるというだけでも非常にいい環境だと思います。
僕らはひとつのきっかけでしかないんですけど、競技人口を増やす、4v4をプレーする子がひとりでも増えるというのは、僕はもちろん目指していきたいなと思います。