【無料公開】Jリーグクラブライセンス制度などに関する記者会⾒全文(1)
Jリーグクラブライセンス事務局の大城亨太クラブライセンスマネージャーが7月26日、秋田市のASPスタジアムで記者会見を開きました。大城さんはこの日、秋田県、秋田市、ブラウブリッツ秋田の3者とヒアリングを実施し、その後に記者会見の場が設けられた形です。主な内容は主に下記の4点。
- ブラウブリッツ秋田のクラブライセンスの現状把握
- スタジアムの施設基準の見直し
- シーズン移行に伴う降雪地域のクラブへの支援
- 質疑応答
4の質疑応答はかなり長くなったため、まず1~3を掲載します。
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あらためまして、皆さんお時間いただきましてありがとうございます。クラブライセンスマネージャーを務めております大城と申します。
本日お集まりいただいたんですけど、なにか大々的な発表があるわけでは特にございません。本日、秋田県さん、秋田市さん、クラブと、スタジアムに関してヒアリングというか打ち合わせをする機会がありました。
このクラブライセンスはいま、ブラウブリッツさんは特例みたいな扱いを受けているんですけど、ルールが少し複雑で、理事会後会見なんかでも、秋田の地元メディアの方からご質問いただいたりすることも多かったので、せっかくなのでということで、この制度についてご説明をして、ご不明な点があれば、きょう解消していただきたいなと思ってお時間をいただきました。
あわせてシーズン移行に伴って、秋田も降雪地域になるので、リーグで考えている対応について、具体的なことはこれからになるんですけど、それについてもあわせてご説明させていただきたいなと思って、お時間をいただいきました。よろしくお願いいたします。
ブラウブリッツ秋田のクラブライセンスの現状把握
それではまずクラブライセンスのスタジアムの問題。施設基準の問題についてですけれども、ご案内の皆さんも多いかと思うんですけれども、いろいろ課題になっていることについて振り返ると、ブラウブリッツ秋田さんは、以前、J3で優勝しても昇格できないようなシーズンもございましたが、2018年度、(翌)2019シーズンのJ2のクラブライセンスを申請される際に、現ソユースタジアムをホームスタジアムとして申請をいただきました。
そのときソユースタジアムに、大規模改修、基準を満たすための改修工事をしていただいて、最終的にJ2ライセンスが交付されたんですけれども、Jリーグのスタジアム基準のなかで、スタジアムの大規模改修を行うときには、基本的にスタンドに屋根をかけないといけないという、私たちとしては濡れる観客席はあり得ないと思っていて、少しでも減らしていきたいと思っているので、新しくスタジアムが新設される場合ですとか、大きな改修をするときには、スタンドに屋根をかけてくださいってことをルールとして義務づけています。
そのときちょうど、秋田県さん、秋田市さん両自治体が中心となって新しいスタジアムを整備する構想が進んでいて、ソユースタジアムに屋根をかけるとなると、かなり多額の費用も発生して、その費用はできれば新しいスタジアムのほうに向けたい、二重投資を避けたいという意味で、屋根の設置を免除してもらえないかというご要望がありまして、理解できるお話でしたので、屋根に関しては特例で設置を免除するということで、2019シーズンのJ2ライセンスが交付された経緯があります。その後、ブラウブリッツさんもJ2に昇格されて、いまもご活躍いただいているという状況です。
昨今スタジアムのスケジュールに関して、われわれからいろいろ地域の皆さんに確認をさせていただいているのは、2018年度に新しくスタジアムを作るという前提で、ライセンスを特例的に交付したんですけれども、その後もう6年経ったいまでも基本計画すら立案されていない状況。新しいスタジアムを整備することが前提だったので、そこに向かって動いていないのであれば、この特例の前提自体がおかしくなるということで確認をさせていただいています。
最近はないですけど、地元でも一部ソユースタジアムを改修して、屋根を設置して基準を満たせばいいんじゃないかという声も上がっているとお伺いするんですけど、いま申し上げたような前提があるので、ソユースタジアムにいまから屋根をかけるというのは、私たちとしては受け入れられないオプションになります。
当初「新しく(スタジアムを)作るのでそれ(ソユースタジアムの改修)をしません」という形で話が進んでいるので、そこはひっくり返って「あそこに屋根をつければいいじゃないか」ってのは、私たちは受け入れられないので、ソユースタジアムの改修という案は、クラブライセンスの判定においてはありえないオプションだということを、あらためて申し上げておきたいと思います。
2018年度の特例の際に、「いつまでにスタジアムの計画を出しなさい」とか「いつまでに整備しなさい」ということをお互い合意したわけではないので、期日が定められたものではございませんが、一般論として、直近の事例でいうと、スタジアムは構想ができてから出来上がるまで10年ぐらいかかるものなので、そんなにすぐにはできないということも重々承知してますけど、先ほど申し上げたように2018年から6年経ったなかでも、まだ基本計画もできていませんし、地元の事情は皆さんのほうが詳しいでしょうけど、場所も確定していない、誰が作るかもまだ決まっていないという状況。
あのとき「スタジアムを整備します」と表明したものが崩れてしまうようであれば、特例自体が取り消されることになるので、クラブライセンスの判定においては厳しい状況かなと思います。(新スタジアム整備の)期日を設けて皆さんとコミュニケーションを取っているものではないんですけれども、少なくともスタジアム整備に向かって進んでいることは示していただきたいというお話はさせていただいていて、きょうもその進捗状況をお伺いした状況です。というのが、スタジアム整備に向けた地元の皆さんとのコミュニケーションの話です。
施設基準の見直し
続いて昨年、入場可能数のキャパシティに関する基準について緩和というか、少しルールの見直しを行いまして、秋田のほうでもそれを前提にいろいろ検討されてるということなので、そこもご説明をさせていただきます。
入場可能数と私たちは呼んでるんですが、キャパシティの基準に関して、これまでJ1は1万5000人、J2は1万人、J3は5000人というルールを設けていました。1万5000人が大きいかどうかというのはいろいろご判断もあるかもしれないんですけど、コロナ前で言うと、今シーズンもそうなると思いますけど、J1の平均入場者数は2万人ぐらいで、J1に上がったクラブの平均入場者数は1万人をどのクラブも超えてくるので、J1で1万5000人というキャパシティが大きすぎるかというと、そんなことはないと思っています。
ただ、これからJ1を目指すJ2、J3のクラブにとっては少し大きすぎるというご意見があったり、あと地域によって人口とかマーケットのサイズも異なるので、そこは少し柔軟に考えてもらえないかというお話は以前からお伺いしてました。
アジアチャンピオンズリーグ、ACL、今年からAFCチャンピオンズリーグエリートっていう名前になりましたが、その基準でミニマムの入場可能数が5000人と設定されているので、私たちも地域の事情に応じて、5000人規模のスタジアムであってもJ1基準として認めるという改定を行いました。ただこれは単に小さいスタジアムを認めるということではなくて、それなりにクオリティの高いスタジアムであれば、地域の状況に応じて柔軟に捉えるというルール改定になりますので、5000人でもいいという単純な改定ではなくて、基本的にはJリーグの規約のなかに定めている理想のスタジアムっていう4つの要件を満たすことが大前提になっています。
4つの要件が「アクセスがよいこと」「すべての観客席が屋根で覆われていること」あと「複数のビジネスラウンジ、スカイボックス、高密度Wi-Fiとかホスピタリティが充実していること」4番目が「フットボールスタジアムであること」、この四つの要件を満たすことが大前提になっていて、そういう質の高いスタジアムであれば、少し小さくても認める可能性があるという改定になってます。
いま申し上げた理想のスタジアムの4要件は必須の事項で、加えて最終的な判断は理事会が行います。理事会が考慮する内容としては、ホームタウンの人口がどのぐらいなのか、たとえば300万人ぐらいいらっしゃる自治体で小さいスタジアムというのはなかなかマーケットサイズと合わないかなと思っています。ここは何人以上であればいい、何人以下であればいいみたいなルールを決めてるわけではないんですけど、ホームタウンの人口は考慮する要件になってます。
あとは先ほど申し上げたように、実際にクラブがJ1に上がったときに、5000人のスタジアムでいいのかっていうと、たぶんそこは小さすぎます。スタジアムのキャパシティはある意味、クラブの成長のキャップ(そこで成長が頭打ちになるという意)にもなってしまいます。たとえば最初は1万人規模でもいいんですけど、少し敷地に余白があったり、計画として増設できる可能性があるのかどうなのか、ここは必須の要件ではないんですけどその拡張可能性も考慮することにしています。
あとは(5000人にした場合は)小さいスタジアムになるので、1万5000人のスタジアムと1万人のスタジアムと同じ売り方をしていたら、入場料収入が3分の2になってしまって経営上が厳しくなるというか、成長の余地がなくなってしまうこともあります。たとえば質を上げて高価格帯の席を設置するですとか、入場料収入が減ってしまうことに対してどう対応するのかっていうプランなども確認させていただきます。理想のスタジアムの4つの要件というのは必須ですけども、いま申し上げたホームタウンの人口とか拡張可能性とか、入場料収入への対応策は必須ではないんですけど、そういうことを総合的に判断して理事会で少し小さなキャパシティでも認める可能性があるという案になってます。
これはいろいろ必須の要件をちゃんと満たしているのかということと、いま申し上げた考慮する要件を充足してるかっていう問題があるので、個別個別に判断することになると思います。いま秋田でも1万5000人じゃない規模でご検討されてると伺ってますけど、それが認められるかどうか、いま申し上げたような、いろんな要件もセットで確認させていただくことになるので、いまこの瞬間に「小さくても大丈夫です」っていうものではございませんということは、お話しておこうかなと思います。
シーズン移行に伴う降雪地域のクラブへの支援
3点目がシーズン移行に伴う降雪地域の対応。今回このコミュニケーションの場を設定させていただくときに、もうちょっとご説明できることがあればいいかなと思ってたんですけど、ちょっとわれわれ自身の検討もまだ十分ではないのでフワッとしたお伝えの仕方にはなります。
皆さんご案内のとおり、シーズン開始時期と終了時期は、現状の「2月スタート12月終わり」から、「8月スタート6月終わり」みたいな感じでカレンダーが変わることになりますが、実際試合を行う期間はほとんど変わらない案で検討を進めています。
ただいまはシーズンオフである冬の時期がウィンターブレイクっていう形になります。現状ですと12月にシーズンが終わって、チームは一旦解散をして、また1月にキャンプみたいな形で集合してっていう冬休みの過ごし方になるんですけど、そこがシーズン中に一旦解散しないで同じチームとしてやっていくことになります。
試合をしない期間はほぼ同じだと思うんですけど、過ごし方は変わってくるというふうに思っています。なのでキャンプのやり方もちょっと変わってくるというふうに、いろいろなクラブとのコミュニケーションのなかでご意見をいただいているので、キャンプ費用にかかるクラブの負担が新たに過大に発生してしまわないような措置は必ず必要かなというふうに考えているのと、あとは全天候型の練習施設をJリーグも一部費用を負担させていただきながら、降雪地域を中心に整備をできないかと検討しているところです。
チェアマンの野々村もいろんなところで言ったりしている、ひとつの案としてエアドームですね。日本にはまだあんまり事例がないんですけど、柱とか屋根の鉄骨を使わない、要は膨らませて屋根を作るような、一番大きいのだと東京ドームみたいな形になります。そういうエアドーム形式だと、海外ではけっこう安価に施設が整備されていたりしますので、われわれとしても日本に導入できないのかなと検討はしています。
建築基準法上の問題もあるので、簡単にいまできることが見えてるわけではないです。エアドームという形になるのか、既存にあるような柱を使った形になるのかはこれからなんですけど、できるだけ安価に整備できるメニューをリーグが中心になって検討して、それを地域に整備していただくときにも、少し費用面でもお手伝いができればなと考えております。
キャンプ費用の負担増への対応と、練習施設。ただ練習施設に関しては、イニシャルに対して多少一緒にっていうふうには思ってるんですけど、ランニングまでJリーグの施設として各地でやっていくっていうことは想定していないので、地元で公共の施設になるのか、民間の施設になるのかはそれぞれの地域のご判断だと思ってます。そこは地域で回していく構想を立てていただいた上で、イニシャルに関しては少しJリーグとしてもというふうに考えているというところでございます。